いしはらしんすけ

誰がハマーショルドを殺したかのいしはらしんすけのレビュー・感想・評価

3.6
1961年、アフリカのザンビアで起こった第2代国連事務総長・ダグ・ハマーショルドの飛行機墜落事故死にまつわる謎に迫ったドキュメンタリー。

監督も作品冒頭で「誰やねん」扱いしている通り、私もハマーショルドさんについてはまったく存じ上げませんでした。

ただこの映画はハマーショルドさんについて最低限のことは教えてくれるものの、さほど深掘りすることはないという。

しかも「ハマーショルドの墜落死が暗殺だったのではないか?」という疑惑の解明が動機だったはずが、次第にその本筋からズレていき、その事件に関わったとされる秘密組織・サイマーとその中心人物、ドクター・マックスウェルの正体探しに焦点が当たっていくのですね。

ほんでまたサイマーにまつわる話ってのが、とてつもなく怪しいというか、英国系の諜報組織が絡んでるだのなんだの、典型的な陰謀論チックで、だんだん「これ、全部フィクションなんちゃう?」という気にさせられるんですな。

このあたり、おそらく監督は意図的にやっていて、ホテルで2人の黒人秘書が監督の証言を古いタイプライターで打ちながらやり取りするという虚構めいた演出をインサートすることで、あえて観客を混乱させてると思われる。

この人を食った、ある種愉快犯的なアプローチは好悪が分かれそうですが、わたしゃ全然好きな方ですね。

サイマーの件は後半、南アフリカのアパルトヘイトを巡る信じられないほど非人道的な秘密工作にまで行き着き、まあ結局どこまでが事実かは証明されずじまいなんですが、あまりに重たい話だけに、完全なフィクション化も正調なドキュメントにも出来なかったのかと想像する次第。

マッツ・ブリューガー監督、ふざけた中にも硬骨なジャーナリスト魂が宿った人なのかなと、この怪作は伝えてくれています。