アキラナウェイ

ブリング・ミー・ホーム 尋ね人のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.8
仮に子供が行方不明になったとして、正気を保って生きていくなんて出来るだろうか…。想像しただけでゾッとする。とても耐えられない。

そんな耐え難い現実の失望と希望の狭間で、1人の母親が息子を見つけるべく孤軍奮闘する韓国産サスペンス。

これはもう、見事に胸糞中の胸糞。

看護師として働くジョンヨン(イ・ヨンエ)は、6年前に失踪した当時7歳の息子ユンスを必死に捜し続けていた。そんな彼女の元に、ユンスの目撃情報が寄せられる。目撃された少年とユンスの特徴が一致する事から、その情報に一縷の望みをかけ、ジョンヨンはユンスに似た少年がいる"マンソン釣り場"へと向かう—— 。

憔悴しきった表情。
移り変わる状況により、光が宿ったり、暗く沈んだりする瞳。
所作の1つ1つの説得力が素晴らしい、ジョンヨンを演じたイ・ヨンエ。14年ぶりの復帰との事で、実生活でも母親である事が、当然演技にブーストを掛けたに違いない。

ジョンヨンと夫と"行方不明家族捜索の会"の青年以外、出てくる大人が見事に全員クズ!!

マンソン釣り場は社会のはみ出し者達の吹き溜まり。加えて、タチが悪いのは警察官すら味方じゃないって事。「私は警察官だ」という言葉を信じちゃいけない。ユ・ジェミョンが憎ったらしいクソ野郎をある意味好演。

描かれるのは行方不明事件とその裏に潜む児童労働の闇。

昼は釣り場で働かせ、夜は鎖を足に繋いで軟禁。それでいて、子供を「育てている」だの「養っている」だの吐(ぬ)かす釣り場の男女数名には、怒りと呆れがない混ぜになった感情が込み上げる。

母は強し。

中盤以降、ただひたすらに息子を見つける為に奮闘するジョンヨンから目が離せない。

看護師設定として、筋弛緩薬のみならず、色んな薬品や医療器具を駆使したアクションがあって、復讐劇としての弾みを付けてくれたらもっと胸がすいたに違いない。

韓国って児童売買の問題が根深いんだろうな。

是枝裕和監督の新作「ベイビー・ブローカー」は、まさにそのテーマをソン・ガンホら韓国キャストを揃えて撮ったそうだし。

世界の何処の国であれ、
子供達の人権が守られる社会であれと強く願わずにはいられない。