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リペイントのdm10foreverのレビュー・感想・評価

リペイント(2018年製作の映画)
2.4
【何だかなぁ・・・】

文字通り「何だかなぁ」と阿藤快さんが言ったかどうかは定かではないが、どう評価していいのかちょっと悩む作品。

約5分の作品の中で「極端に少ない情報」と「極端に少ない登場人物」で「極端に盛り上がらない話」が展開する。
演者の演技にも「フリ」や「タメ」もなく、常に一本調子で進むので、サスペンスとしても先が読めてしまう展開に、久しぶりに5分が長く感じた。

――― 椅子とテーブルしかない無機質な部屋を訪れる一人の男性。目の前の壁には3枚の絵が飾られている。
「ジュースがなみなみと入ったコップの絵」
「0とだけ書かれている紙幣らしき絵」
「ただ立っているだけの人間の絵」

しかしよく見ると、絵の端が額から浮いていることに気がつく。
暇を持て余した男性は「ジュースの絵」の端を摘んで恐る恐る剥がしてみる。
すると、その下には「空のコップの絵」が描かれていた。
「?」
意味がわからず剥がした絵をテーブルに投げ捨てると、そこには絵にあったのと同じ「ジュースがなみなみと入ったコップ」が現れたのだった・・・。

いわゆる「3段オチ」におけるところの「ルール説明のためのジャブ」投下。
なるほど、という事は残る2枚の絵も剥がせば、その絵に関連した何かが起きるのねという事がインプットされる。

・・・ここまではいいと思う。

(この先、何が起こるんだろう?)

ただ、そこから先の展開に意外性がなく、結果的には「だろうね」という事しか起こらないまま終わってしまう。
たった5分で何ができるというわけでもないけど、こういう3段オチのような古典的な題材に特化した(他の要素は一切排除した)作品にするのであれば、もっと個性的なヒネリがあれば面白かったのにな・・・とちょっと残念。

正直、面白いか?と聞かれれば「面白くはない」と答えるレベル。
でも、是もまた経験。

それは「観る側」にとっても「撮る側」にとっても。



っていう気持ちになれたのは一本の短編との出会い。

「カメラは止まったまま」っていう札幌国際短編映画祭で入選した「おらが町札幌」を舞台とした短編作品。タイトルこそ「アレをアレした」っぽいけど、内容は当然違う。

映画を撮りたい男の子と、女優になりたい女の子。
「今度こそ撮る!」って息巻いているくせに、自分に才能がない事がわかっているから、それを認めるのが怖くて中々一歩が踏み出せない彼と、「そんなこと言っていても時間は立ち止まってはくれないんだよ」と、どんなときも彼の背中を押し続ける彼女のお話。

「短編だっていいじゃない!パクリだっていいじゃない!映画を撮るって凄いんだよ!」

やりたいことがあるのなら、まずは一歩を踏み出さなければ何も始まらない。
黒澤明だってスピルバーグだって、みんな「最初の一歩」から始まったんだ。

ずば抜けた作品でもないし、完成度もそれ程高いわけでもないかもしれないけど、温かいメッセージとグッと来るラストに好印象を持った作品。
Filmarksで挙がっていないのでレビューは残せないけど、個人的には好きな作品。
そして、その作品と出会ってから、最近短編映画を観るようになった。

粗くたっていいじゃない、詰まらなくたっていいじゃない。
もちろん、面白いに越したことはないけど、そういう出会いも嫌いじゃない。
長編の大作映画だってそう。中には面白くないのもある。だから一緒。

「撮りたい!」から全ては始まる。

頑張れ、未来の巨匠たち。
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