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地獄の黙示録 ファイナル・カットのTakaCineのレビュー・感想・評価

4.5
【混沌と狂気】
こんな凄い映画だとは思ってませんでした。
何が凄いって…強烈な映像と音が一気に五感を包み込み、混沌と狂気にまるごと放り込んでくれるのですから😵🌀

映像にピッタリな「The End」(ドアーズ)の気だるい響きから始まり、まるでトランス状態になって地獄に墜ちていくかのよう…

70~80年代に続々作られたベトナム戦争映画の中でも、賛否両論の評価とカルト的な人気がある作品。

脳内を揺さぶる攻撃的な映像や音響、何よりもカオスすぎる物語に終始吐き気がします(褒め言葉)。

ベトナム戦争の狂気を体感する意味では、ダントツに推薦できる映画だと思ってます😌☝

特に今回は音が段違い😲🔊‼️
なんてったって、世界で初めて5.1chを導入した本作を、立川シネマシティで「極爆SILENCE上映」したのですから😍ヤッター🎶

《極爆SILENCE上映》
今まで味わったことがない"ズン"と響き渡る重低音、全方位から飛び交う銃弾や爆音の嵐…音だけで戦場の恐怖をリアルに体感させてくれます😂

コッポラが願った「振動する空気を内臓で感じる低音」って、こんな感じなんでしょうか…

確かに、内臓まで響き渡るような重い音でした。

『ようこそ映画音響の世界へ』(2019)で紹介された本作。アカデミー録音賞を受賞した本作の"音作り"の裏側を知ってから、絶好の体感するチャンス‼️とばかりに鑑賞しに行きましたよ😄

冒頭のヘリのローター音が旋回する様や、様々な音が縦横無尽にあちこちから鳴り響く様…これって大大大好物😋💕映画館の極上スピーカーシステムだからこそ味わえる、究極の『地獄の黙示録』‼️

音の構成力・演出力が桁違い‼️("音"の制作を担当制にしたのもごもっともな、緻密さと情報量が感じられました)

究極の音を体感するだけでも、映画館で鑑賞できて良かったです😂🎶

《ベトナム戦争とロック》
他のレビューにも何回か書いてますが、昔WOWOWで見ていた「グッドラック・サイゴン 」というドラマのテーマ曲が「Paint It, Black」(ローリング・ストーンズ)で、オープニングに流れる所が凄く格好良かったのをよく覚えてます😌

本作の「The End」もそうですけど、ベトナム戦争とロックは妙に合いませんか?

《最高で最悪な映画体験》
●最高の映像美と音響設計
"光の魔術師"と呼ばれ、アカデミー撮影賞に三度輝くヴィットリオ・ストラーロの魔術的な映像美😍✨✨

"映画音響の世界に関わるもの全員の父親"と呼ばれ、アカデミー録音賞(二度)と編集賞(一度)に輝くウォルター・マーチの驚異的な音響設計😍✨✨

天才たちの強烈な画と音のイメージが、並みいるベトナム戦争映画の中でも、本作を稀有な存在にしていると思います‼️

●最悪な狂気と製作現場トラブル
キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)が代表する戦争の狂気。自分で攻撃しておいて救済もするカオスな人格、自分の遊興のために村を襲撃したり、絶対俺は被弾しないと豪語したり…戦争=狂気を面白おかしく体現してくれる大好きなMADキャラです😁‼️

確実に変な奴だけど(格好がボーイスカウトみたいだしw)、部下想いの戦争では「英雄」と言われる人物なんでしょうね…
(部下想いなのに、危険なサーフスポット調査をさせる鬼畜ぶり)

有名な『ワルキューレの騎行』(ワーグナー)を大音量で流しながら襲撃する様は、自らを英雄に見立てて害虫を駆除でもするような掃射で、完全に狂気そのものでしたね😱💦

もう一人の狂気の権化、カーツ大佐(マーロン・ブランド)。

とても優秀な軍人だったのに、軍の命令を無視して暴走、独裁王国を築く…だから軍は抹殺せよ!って😥。。

言うこと聞かないから殺す!って、その論理もヤバイよ😰

軍人が規範を破る"タブー"

もはや人が人を殺すことが"タブー"でない戦争で、内部の規範を破ったからと「死」を宣告されるカーツ。

絶対命令服従の軍事社会で、カーツのように叛く存在は邪魔(同じく狂っているキルゴア中佐は、従順だからセーフ!?)。

彼の抹殺を命じられるウィラード大尉(マーティン・シーン)の苦悩。"タブー"の曖昧な境界線や戦争特有の非人道的なモラルに悩み、正常か異常か分からない精神状態で死地(冥界)に赴きます。

軍人が軍人を殺す"タブー"

戦争の英雄を殺す、
それも軍の命令で…

大いなる矛盾を感じ、焦燥し、苦悶し、嫌悪する。

タブーを決めるのは誰か?
カーツは狂っているのか?
狂っているのは誰なのか?

その一見、哲学的な問いが、本作を難解なものにしていますね。

その混沌と狂気の世界に、こちらも観ていて引き摺り落とされました😱💦

そして、存在がカオスな人!
それはマーロン・ブランド。

"20世紀最高の俳優"と呼ばれ、アカデミー主演男優賞に二度輝く名優の、なんたる酷い体たらく😭悲しすぎる💦

さすが稀代の名優なので、独特の存在感、顔面の威圧感、声の繊細で詩的な響き、暗闇に鈍く光るハゲ頭(デブデブ過ぎて、体は映せなかったらしいけど 涙)など、異様な風体が画面いっぱいに現れます。

…ですが、ブランドの片手間演技には正直ガッカリ😞💨

ミステリアスで顔面だけで惹き付けるのは凄い…には違いないけど、あんた人物像がブレブレやん!?苦悶した振りしてるやん!?詩を読んで何がしたい?中身なさすぎ…

ブランドのモンスター的なオーラで、誤魔化されているだけ…
(ブランドが大好きなので、これは我慢できません😓)

カーツ大佐とウィラード大尉の表裏一体な個性、とかもっと描けるはずだったのに、ブランドの気紛れな演技プランで壊された気がします。

これは失敗ですね😢

カーツ王国に行ってからのエピソードは、ブランドのわがままに振り回されて話の軸がブレブレになってしまったのではないでしょうか?なんか尻すぼみ…
コッポラ監督、可哀想😭

その他にも度重なる製作現場トラブル(キャストの降板、台風でセット壊滅、主役が心臓発作で入院、ホッパーのヤクチュウ問題、撮影超過で追加予算を監督が自腹、監督がノイローゼで自殺願望…)で、もはや監督自身が「何を描くべきか分からない」カオス状態に😱💦それこそ狂気の沙汰‼️

その模様は『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』(1991)に描かれているようなので、いつか観てみたいです。

映画で描かれる狂気と、撮影現場で起きている狂気の、奇妙な一致と相乗効果。現場の混乱や迷走が、そのまま映画のフィルムに焼き付いたかのようなちぐはぐさ。

前半の迫力ある戦闘シーンとカーツ捜索までは見応え十分、後半のカーツ王国のアバンギャルドな展開は…パゾリーニ風?とか思って観てましたが、意味不明としか思えませんでした😢(牛の屠殺は嫌悪でしかなかった)

この興奮と混乱をもたらす映画は、当然世の中でも賛否両論😁

《不名誉のワースト1位》
昔買った映画の手引き書「洋・邦 名画ベスト150」(文藝春秋編)のコラムに記載されていた"洋画ワースト1位"が本作だったのを今も覚えてます😅

有名監督の凄い話題作でありながら、まあ、破天荒で意味不明な部分がありますから…ワーストとして選ばれてしまうのも理解はできます😅

《震えるほど強烈な映画表現》
そのマイナス面を凌駕するのが、他の映画が太刀打ちできない、震えるほど強烈で忘れられない映画表現(冒頭のドアーズ、ワルキューレ…)が突出しており、地獄の光景でありながら刹那の美を感じさせるナパーム弾投下シーン(なんと恐ろしい感覚😱)…ストラーロの幻想的でグラデーション豊かな映像美に陶酔して、心を一瞬にして奪われてしまいます😍💕

「CGなしの衝撃」と予告編にありますけど、本物のヘリコプターや戦闘機やナパーム弾を使用したド迫力は、今の映画ではなかなか出せない(やれない)臨場感に満ち溢れています😂✨✨

正直、現代の本物志向映画『テネット』(2020)より満足感が高かったです(笑)

混沌と狂気を見事に画面に宿らせ、強烈な映画表現が五感を激しく揺さぶります‼️

好き嫌いがはっきり分かれる映画。僕は、飛び抜けた映画表現に惚れ込んでいるので大好きです😍✨✨(惚れ込んだ女性の欠点は、目を瞑ります的な感じw)

《蛇足》
仏像がよく撮されていたけど、なんで?

ハリソン・フォード、ローレンス・フィッシュバーンがめちゃくちゃ若い‼️

まさかコッポラも出てくるとは、今まで気付きませんでした。

書きたいことが多すぎて、長文になっちゃいましたね😅
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