horahuki

The Perfume of the Lady in Black(英題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

4.5
自己の受容とトラウマによる抵抗

これは大傑作!!過去のトラウマに悩む主人公シルヴィアが『ローズマリーの赤ちゃん』的な悪魔崇拝者たちによってトラウマ再発→闇堕ちしていくバリッリ製ジャーロ。トラウマを克服して自立し、仕事もバリバリこなし、彼氏とも仲良くやってたところに首突っ込んでくるサタニストども許すまじ!!

アルジェントと仲良しバリッリの監督デビュー作。どうやら本作は『4匹の蝿』から影響を受け、また逆に『インフェルノ』『オペラ座 血の喝采』に影響を与えたらしい。そういうレジェンド同士のエピソード大好き!そしてマルチーノ『All the Colors of the Dark』からの影響も受けてそう。

自分の家のお茶っぱが無くなったからって、一人暮らしの若い女性(主人公)の部屋にズケズケ入ってきて、「お茶入れて」ってお願いしてくる隣人ジジイはなんだったんだろ…。しかも「スプーン2、3杯」とか細かく要求してくる厚かましさがうざい!🤣お茶入れた後に有無を言わさずに速攻で追い出した主人公さん強くてサイコーだった😂

そんな感じでマンション済みの主人公は、隣人ジジイ含めて『ローズマリー…』と同じく色んなところから狙われてるように思えてくる😱果たして誰が味方で、誰が敵なのか。それとも全て精神に不調をきたした主人公の妄想なのか。

OPに長々と映される家族写真であらかた語ってしまっていて、中心手前にママ、左側奥にパパとパパに寄り添う幼い主人公。両サイドを隔てる溝や服装の違い(清廉潔白、色欲)も含めて、主人公の主観をそのまま写真に投影しているのがわかる。プロローグではカラー、本編ではモノクロというのもうまい!そしてその写真を自ら壊し、すぐに直そうとする行動から、需要と拒絶で揺れ動く内面の葛藤が痛々しいほどに伝わってくる。『RAW』とか『ジンジャースナップス』を病的な方向に振り切ったみたいな感じ。

パパ大好きだったのに幼い頃に船で死んじゃってショック受けて、それなのに愛人と致してるママを目撃してトラウマになってる主人公は、自身が段々と嫌いなママに近づいていくことを自覚しつつも拒絶しようと必死になっている。常に持ち歩いている人形(ペルソナ的な幼児性)は催眠術による精神分析を受けた後には、実際に少女として具現化する。誰かが入ってくる時に必ず灯す玄関の照明(白色は服装とも呼応)は、彼女にとっての自己を守るための灯台であり、また船乗りであったパパの帰りを願う幼児性の現れでもある。

ママに手向けた黄色い花は自分に贈られ、花瓶、ドット柄のワンピース等々、知らず知らずに次第に“ママ”を纏い同化していき、そんな自分からの逃げ場であるはずの幼児性は当然逆行でしかなく、オルゴールは牙を剥く。ママとの同化が鏡を覗き込んだ際の鏡像と“匂い”からスタートしていくのも面白いし、その後も鏡像を連発し、二重三重と幾重にも混濁していく“自己”と“他者”を映し出す。三面鏡は冒頭の三隻のボート(=父親)と呼応し、その一面には少女が入り込む。それと関連して“水”も何度も登場し、水越しのロングショット、放水等々、危うさを常に意識させている。

長回しで人物の移動を捉えつつ、空間を幾つも跨いでいくようなテンション上がるカメラワークが多く、それほど文法には囚われずに美的センスを全開に押し出したカッコ良さが全編に漂っていて素晴らしかった!見てるだけでほんと楽しい!!
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