クレセント

郵便配達は二度ベルを鳴らすのクレセントのレビュー・感想・評価

4.0
初めて会った日のことを昨日のように覚えているわ。女は男にすべてを語り始めた。あの時あなたは靴下も履いていなかった。恋に落ちた理由もわかるの。そして何故夫を憎んでいたかも。私を捨ててもいいわ。だってお腹にあなたの子供がいるの。何だって? 男は驚いて言った。妊娠したのよ。もっと早く言いたかったけど頭が混乱していたの。でももう吹っ切れたわ。私たちのこと、いろいろ考えたわ。子供のこともよ。私たちは一人の命を奪ったわ。でも新しい命を授かったの。もう怖いものはないわ。あなたへの恨みもない。愛しているわ。永遠に。でも私を憎みたければ憎んでもいいのよ。殺したければ殺しても。もうすべて話したわ。だからあなたの好きにして。それを聞いて男は外に飛び出した。廊下で立ち聞きしていた子供に尋ねた。俺は悪い人間か?子供は素直に首を横に振った。......1942年ヴィスコンテが製作したこの映画はイタリアン・ネオ・リアリズムの始まりと言われた。戦争が終結しようとしたなか、プロパガンダが影を潜め、人々は現実に引き戻された。彼は人間の欲望や挫折そして愛憎を巧みに取り入れたネオ・リアリズム(新しい現実主義)と言われた、それまでとは異なる世界感を描き始めたのである。
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