mさん

ワンダーウォール 劇場版のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

ワンダーウォール 劇場版(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

独特な大学生の喋り方、
哲学を交えた口論、
そして近衛寮の無秩序な空間
ポスター、謎の企画、本来の目的で使われてない押し入れや茶室の空間、意味をなしてないトイレ
誰が何年先輩でどこの学校の人かもわからない交流。

森見登美彦が描く作品のように、癖のある京都の大学生の雰囲気が見事にパッケージされてて、これだけでずっと見ていたいと思える。

そこに大学vs近衛寮という権威と自由のバトルがある。だけどここがあまり発展しないまま終わる。クセの強い大学生にしか思いつかない方法で、渡り合っていくのかと思いきや、割ともう消化試合のようで「もう無理」ということがわかっていて、みんな諦めているところから始まる。そしてそれが結局覆らないままラスト現在どうなってるかのテキストで終わってしまうので、近衛寮はどうなってしまうのかのサスペンスや大学vs学生の攻防を期待してたら肩透かしを喰らう。

どちらかというと本作で伝えたいのは、
バトルではなく

大きな権力や利益によって失われていく
豊かな場所があるということ

大学生は自由だけど、自由すぎて組織として成り立たず、組織として成り立つ大学と渡り合うことはできないという大学生の弱さを伝えたいと思った。

大学生は自由でいいなと思ったけど、組織で取り組むこういう問題には一切役に立たないんだなとか。近衛寮は豊かで素晴らしい場所だけど、利益や権威によって無くなっていくんだなとか、割と希望と絶望を描いてる気がした。

ただやっぱり短い。もっと近衛寮のキャラの物語が見たい。女の人とか、せっかく大学側だけど学生の味方をしたいみたいなニュートラルな人が出たんだから、そこからもっとドラマが欲しかった。伝えたいメッセージ2つは割と最初からわかることなので、物語の積み重ねの結果わかるようなメッセージや伝え方が欲しかったかもしれない。結局ラブストーリーは近衛寮に対するものだったのねと思ったけど。

こう言う映画にはレールを敷いたカメラの動きは一切いらないし、むしろ合わないなと思った。(バスの所とかハリウッド映画なら絶対レールだなと思った。)学生が撮っているようなドキュメンタリーチックなブレのある撮り方がいいなと思った。
mさん

mさん