うらぬす

ザ・レポートのうらぬすのレビュー・感想・評価

ザ・レポート(2019年製作の映画)
3.9
"THE TORTURE REPORT"の"TORTURE"(拷問)を塗り潰すことで、CIAの隠蔽工作を痛烈に皮肉ってて面白い。会話劇中心のうえに、みんな早口だし専門用語も飛び交うしで大変。でもアメリカの暗部に迫っていくスリルと己の身を擲って調査に没頭するアダム・ドライバーの熱が、ちゃんとサスペンスとして楽しめる映画に仕上げている。
強化尋問技術(EIT)=拷問はたしかに唾棄されるべきものかもしれないけど、やっぱり自分には何が正解か分からないや。何の責任も権利も無い人間が、外野から「たとえ相手がテロリストであっても人道に反する拷問は行ってはならない」とか「無辜の民の命を守るためならどんな手段でも使うべきだ」と主張するのは簡単。でも自分が本当に判断を下したり拷問を実行する立場にいたとしたら? ……そう考えると、沈黙してしまう。
『テイク・シェルター』でも思ったことだけど、デイヴィッド・ウィンゴの音楽は煌びやかさこそ無い(そもそもこの映画に煌びやかさは必要ない)ものの、物語を静かに彩り盛り上げる縁の下の力持ち的な働きをしていて良い。