akihiko810

街の上でのakihiko810のレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
3.7
今泉力哉監督。下北沢を舞台にした恋愛群像劇

下北沢の古着屋に勤務している荒川青は浮気されて振られた恋人を忘れることができなかった。ときどきライブに行ったりなじみの飲み屋に行ったり、ほとんど一人で行動している彼の生活は下北沢界隈で事足りていた。ある日、美大に通う女性監督から自主映画に出演しないかと誘われ…

一言で言うと、これは私にとっての「俺も下北沢でこんな人生を送っていたかった…」映画。
大学生の頃、東京に憧れてそれがためだけに東京の大学に進学し、下北が近かったので下北をホームにしていた。お洒落カルチャーに囲まれたその街は、お金がないなりにヴィレバンや古書店寄ったりと楽しかった…。大学を卒業してからはわけあって埼玉の実家に戻って暮らしているのだが、俺もできれば今も下北沢で、主人公の青君みたいに下北を堪能しながらだらだらと恋愛したかった…というのが個人的な感想(苦笑)

と、自分語りはそこまでにして映画内容の感想。
今泉節絶好調で、主人公や脇役たちのだらだらとした「リアルな」会話劇がなされる。今泉脚本の会話台詞は絶好調だ。そしてなんとその会話のポテンシャルで2時間の映画にしてしまうのだから凄い。あと、俳優陣のもつ今どきっぽい「雰囲気」の引き出し方も最高。登場人物一人残らず捨てキャラにならずに魅力的に描いてるのはエライ。
突然身の上話を切り出してくる警察官とか、町で偶然出くわす元カレとか、実際には実在するわけはないのだけど、「街の上で」の世界には必然と存在しているんだな、という気にさせられる。

さて、Filmarksでの本作の評価は4.1と高評価だが、自分はそこまでは高くない。会話劇中心であること、群像劇で登場人物が多いことで映画としての密度が薄まってしまっていると感じたからだ。もう少し登場人物や時間を切り落として密度を高めるべきだったように思える。
見終わってしまえば、本作の話の内容は、別れたカップルがなんやかんやあって復縁する、だけの話でしかないのも欠点か。
にしても、こういうだらだら感が気にならなければ、今泉節を全面に押し出した良作であることには間違いない
akihiko810

akihiko810