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オン・ザ・ロックのtakのレビュー・感想・評価

オン・ザ・ロック(2020年製作の映画)
4.1
夫ディーンの言動に浮気を疑った主人公ローラ。悩んだ彼女は男女のトラブルに最も詳しいであろう人物に相談を持ちかける。それは女性とのトラブルで、家族を捨てて出て行った父フェリックス。ディーンの行動を不審に思った二人は、探偵ごっこのような行動に出る。そして、それまでお互いに思ってきたことを口にするようになる。父と娘の関係は?夫の行動の真実は?

同じ脚本を別な監督が撮ったら下世話でスキャンダラスな話になっていたかもしれない。だけどソフィア・コッポラは違った。この映画には派手な劇伴も、昔彼女の映画を彩ってきたオシャレなロックやポップスもない。しかし全体的に淡々とストーリーが進んでいくにもかかわらず、飽きさせることのない面白さがある。

映画のツカミがまず上手い。冒頭で父親が娘をどう思っているのかが真っ暗な画面に台詞のみで語られる。そして娘の結婚式、衣装を脱ぎ捨ててプールではしゃぐ新郎新婦。あー、他の男のものになっちゃったぞ。続く場面は結婚後。子供が脱ぎ散らかした服を拾い集める主人公の足元が映される。先程の脱ぎ捨てられた花嫁衣装と対比させて、それが忙しい日常だと知らしめる。一方的に話しかけてくるママ友にうんざり、ライターの仕事は進まない。そこへ小さな事件。出張先から帰った夫の荷物に女性もののポーチが…。ヒロインがおかれた状況を端的に示す、この数分間で完全に掴まれた。

そしてこの状況を相談するのが、なんともチャーミングな父親フェリックス。茶目っ気たっぷりのビル・マーレイが、ふざけてるように見えながら、娘へのあふれる愛情をしっかり感じさせる。ここから先、父と娘の探偵ごっこ。尾行するといいながら真っ赤なオープンカーで現れ、張り込みのお供はキャビア。タクシーを追いかけ始めると車にトラブル。警察とのやりとり…頼れるんだか頼れないんだかわからない父親がなんともおかしい。

父と母の間に何があったのか。お互いの気持ちがだんだんと見えてくる後半。モネの絵を二人で眺めながら思い出を語る場面が心に残る。一方、夫は浮気の相手と疑っている女性を愛称で呼んだり、父の予言通りに出張すると言い出したり。ますます疑念が深まっていく。

爽やかな結末が染みる。それ以上に父親が「いつまでもオレのもの」と思う気持ちの切なさと温かさに泣きそうになる。不器用な父親が頑張る映画って、やっぱり好きだ。昨年、映画館でやってた時に観ておくんだったな。5人姉妹の映画の感想で、親の七光りなどと書いたかつての僕を許して!😩。フランス王妃の映画で、睡魔に負けそうになったかつての僕を許して!😝