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アフター・ヤンのmiiのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
3.8
家族の愛と喪失の物語。
コリン・ファレルにぴったりの役だと思った。
彼の物憂げな演技が より一層この作品の世界観にマッチして惹き込まれます。
アジアの美しい風景と優しげな音楽にも。
雑踏や雑音が極力排除されて
観る者が 彼ら家族の生活に入り込めるような作りになっている。

序盤のダンスシーンでがっつり観客を惹きつけ
この家族構成は?と興味を持たせ
ジェイクの妻カミラはアフリカ系。
養女ミカは中国系。
これだけでも 多様性に満ちた家族。

そして ミカの子守りのような役割のAIロボット ヤンの存在。
クローンも出てきて
血の繋がりはなくとも···というグローバルな家族の在り方について考えさせられる。

生涯 接ぎ木のような役目であった彼でも
包容力ある人柄から 家族の一員として迎え入れられており
ある日突然 彼は動かなくなってしまう。

冒頭のダンス以降 終始静かで
人の死を見届けたような感覚です。
AIロボットであっても 家族のひとりが亡くなったと同じく
弔うように静かに終わります。

故人も ヤンのようなメモリーがあるといいなと思った。
彼の見てきた風景をそのまま再現できて
故人を偲ぶ事ができる機能。

愛する人は 今までの生涯でどんな光景が記憶に残っているのか?
そして それを自分に置き換えてみる。
新しい記憶が上積みされていくと
古い記憶は どんどん消し去られてしまっている事に
月日の流れの寂しさのようなものも感じたわ。

ヤンのメモリーを観て 私たちは
己の過去から未来へと 想いを馳せる自分がいる事に気付かされるのです。
いつか訪れるであろう死生観についても。
それは 自分の事だけではなく 家族への愛にまで及び
やがて 人生観に到達していく。

「アフター·ヤン」
彼の死によって 彼の存在が大きくなっていったジェイク家族のように
映画が終わっても 思考の広がりを持たせる有意義な作品でした。
mii

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