ピートロ

アフター・ヤンのピートロのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.0
いかにもA24らしいテイストの作品で、OPの「ファミリーダンスバトル」(妙な中毒性がある)以降、物語が進むにつれ音量も光量も消失し静寂さに満ちていく。
アピチャッポンレベルの睡魔に襲われた。
とはいえムードや味わいはとても好み。
監督のコゴナダという不思議な名前は、小津安二郎作品の脚本を手掛けた野田高梧(のだ・こうご)に由来しているそう。
また、劇中で使用されているのは『リリイ・シュシュのすべて』の「グライド」のカバー。

他のユーザーの感想・評価

ふしん

ふしんの感想・評価

3.5
SFですが、私たちの感覚にとても近い映画でした。そう感じた理由の一つは、SF的な道具や思想が比較的少ない世界観だったため。もう一つは、ヤンの故障と家族の感情・行動が、(手段こそ違いますが)大枠は私たちの家族が危篤状態になったり、難病にかかった場合のそれと似ているためかと。過去を振り返るのも、現代だとSNSや日記が役割を担うでしょうし。そのため、SF的モチーフを使ってますが、主人公達の感情や行動に自然と寄り添えたのかと思います。

もう一つ、ぼんやり考えたのは、人間とクローン、ロボットの在り方・区別ですが、人間って、同じ人間同士でも人種や性的指向、職業などの区分で、普段から自分と他人を区別しがちだから、今更な気がしました。また、ここまでのAIが存在する世界であれば、ロボットへの感情的な依存は社会問題にもなっているはずで、対策がされていないのは少し違和感がありました。野暮なことを考えているなぁと思いつつ。

と、あれこれ妄想を膨らませつつも、静かな大人な世界観を満喫できる映画だったと思います。
you

youの感想・評価

3.9
映画中特にこれ!!っていう似た何かを感じたわけではなかったのに、なんとなく小津さんがよぎって 
調べてみると監督が大ファンだなんてびっくりした 

なんて言ったらいいかわからないけど、
家族という形に境界線はない。ぼんやりしている曖昧な何かをやはり一つの言葉にするのは難しい。愛とか 心とか
人間もテクノもクローンも

ツァイフォンって言葉が印象的 

グライドが聴けるとは思わなかった。めっちゃ合ってる
riiiza

riiizaの感想・評価

3.6
ダンスバトルよかった
こんな優秀なロボットいるのに娘をヤンに任せて仕事って逆じゃない?って思ってしまった…けど、その区別すらないと言いたいのかな
YukikoUnno

YukikoUnnoの感想・評価

4.0
覚えていたいものって、なんだろう。必ず見つけ出せる力はどこから来るのか。
アンドロイドもクローンも一般的になった近い未来のお話。
Oda

Odaの感想・評価

3.5
相変わらず笑顔の役が少ないコリンファレル、ハマりすぎる

最初のダンスオフからの最後のリリーシュシュはもう感情の波が追いつかないんですけど大丈夫ですか(?

キャラとしては中国系の設定だけど裏方の名前見てると日系が多いなあ、っていう印象。だからリリーシュシュカバーだったのかしら...。

内容は去年読んだカズオ・イシグロのKlara and the Sunに似てるなあ、こういうアンドロイドの時代来るのかなあ、って人間とアンドロイドの感情が詰まった映画。
家事しながら見ちゃったけどちゃんとイヤホンとかつけてまたみたいなあと思います。
nao

naoの感想・評価

4.2
多国籍な家族って美しい。

ヤンのいなくなった喪失感。
ヤンの記憶に残る木漏れ日の美しさ、
風の音、そして愛おしい人々。

静かな映画なので粗雑な私は寝てしまうかもと恐れていたけれど、まったく退屈なシーンなど無く、むしろもっとずっと彼らの世界に寄り添っていたかった。

「なぜ誰もが人間に憧れるだなんて思うの?」
岩井俊二監督の映画『リリイ・シュシュのすべて』にちなんだTシャツや楽曲が劇中で引用されている。

「グライド」のカバーをMitskiに依頼したのは、アメリカの若者たちの間でリリイ・シュシュ的な存在だからとのこと。

人間の孤独とは?AIに孤独という概念が存在するのか?
アイデンティティの揺らぎ。

わりと早い段階でヤンが故障するのが良い。
終わり方、音楽も良かった。
高校1年生の妹が2回も映画館に観に行き、しかも『グライド』が流れるということでこれは観ないわけには行かない。

記憶の星の葉の一枚一枚が星座の樹木を作り、ゆくゆくは銀河の森になる。それらのざわめきは何かを告げるだけで、語ってはくれない。
全てを「記録」として残せるはずのAIが何をどの一瞬を「記憶」しようとしたのか、この設定が魅力的だった。

書ききれないくらい美しく印象的なカットばかり。アスペクト比を変えていくことによる幅広い表現がモダンだし、何よりオープニングが最高。全体的にただの美しくて静謐なだけにも見えてしまう映像の背後にあるダイナミズムに心奪われる。

『リリイ・シュシュのすべて』の最後に聴く『グライド』は「浮遊」だけど、この映画の『グライド』は「飛翔」だった。
takono

takonoの感想・評価

3.6
近未来設定だがストーリー自体ににそこまで驚きはなく。
挿入曲はとても良い。ライブ会場?のシーン良い。
あとから余韻くる系かな
crybaby

crybabyの感想・評価

2.0

このレビューはネタバレを含みます

レビューの高さに期待してたけど、ようわからんくて途中から寝てもうたわ。やっぱりこういう純文学っぽいのは合わへん。村上春樹さんとか岩井俊二さんが好きな人は好きそう。
「アフター・ヤン」の感想・評価を全て見る

ピートロさんが書いた他の作品のレビュー

ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー(2023年製作の映画)

4.0

監督が「キャラとキャラのぶつかりあい。変に背景を持たせたくなかった」と言っていたとおり、非常にシンプルな構成。主演2人のゆるいやりとりとド派手なアクション(総合格闘技ファンにはたまらないカーフキックや>>続きを読む

三姉妹(2020年製作の映画)

4.3

終盤までずっとイライラしっぱなしのストレス状態が続く。
しかしこの「イライラ」は悪い意味でのそれではなく、本作が非常に効果的に作用している証左としての「イライラ」である。
個性的な三姉妹役のキャストら
>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.7

期待していた「シン」ならではの真新しさもなく、鳥目には厳しい画面の暗さと陰鬱なムード、どこまでが意図したものかわかりかねるチープさなど、 庵野監督や仮面ライダーの熱烈なファンでないとちょっと厳しいかも>>続きを読む

ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

4.0

タイトルとジャケットだけしか知らず、「純愛ものなのかな?」と勝手に思い込みスルーしてしまっていた(よけいなお世話だが機会損失が多そう。あ、でもあらすじを読めばわかるのでそんな勘違いはぼくだけか…)。>>続きを読む

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)

3.9

「ワンピース初期離脱勢」なので、「あれ?なんでゾロ隻眼なの?」という知識レベルだったが、特段支障はなかった。
徹頭徹尾「Ado推し」だが、ウタのキャラ造形も挿入歌も魅力的なので十分楽しめた。
正直、冒
>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.2

派手さやオシャレさや真新しさはないが、しっかりじっくり面白く、151分という長丁場でもまったく飽きることないこの大満足をたとえるならば「ビッグ塩むすび」。
一見、ハートウォーミングな印象を受けるが、「
>>続きを読む