♪ わたしにできること 静かに満ちてゆく
夜を照らす月のように あなたを見守るの
ある偉い人が言っていました。
「マンガは縦軸と横軸が大切。縦軸はストーリー、横軸はキャラクター。売れるマンガは横軸がしっかりとしている」と。
これは映画にも当てはまる話だと思います。
俳優目当てで映画を観る人が多いように、実は物語って“ありきたり”でも構わないのです。というか、ハリウッドの大作なんて基本構造は殆ど同じですからね。大切なのは「誰が演じるか」と「目新しい要素を加える」ことなのです。
そして、本作を仕上げたジム・ミックル監督。
今回気付いたのですが、横軸よりも縦軸を重視する監督さんじゃないでしょうか。かつて手掛けた『肉』にしても『ネズミゾンビ』にしても、隠れた傑作なのは間違いないんですが、いまいち注目されないんです。
たぶん、それは横軸が弱いから。
著名な俳優さんを起用するわけでもなく、キャラクターの心情を深く描くわけでもなく。一般大衆が望む部分を満たしていないんですよ。
それは本作も同じ。
目や鼻から血を流して死んでしまう…そんな連続殺人が起き、調べると血だけではなく脳みそまで流れていることが判明。主人公の警察官は、その犯人を追い詰めるが、何やら謎の言葉を紡ぐばかり…なんて序盤からして前のめりは確実。
また、その後の展開も神懸っているのは事実。
主人公の想いも十分に伝わってくるし、根底に流れているのは“切なさ”に彩られているんですが…うーん。やっぱり、なんだか弱いんです。とても“あっさり”とした味わいなんです。
僕は好きなんですけどね。
たぶん、世間的には「微妙」とか言われちゃうんでしょうね。残念だなあ。勿体ないなあ。
まあ、そんなわけで。
噛めば噛むほど味わいの出るSFスリラー。
できれば横軸ではなく縦軸に着目する形で臨むことをオススメします…とは言っても、先が読みやすいので、監督さんにしては「惜しい」作品なのは間違いないんですが。
それでも一見の価値はあり。
ジム・ミックル監督は今後も注目していきたいと思います。