あでゆ

エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIEのあでゆのレビュー・感想・評価

4.8
監禁場所から逃げ出したジェシー・ピンクマンが、やるべきことはただひとつ。新しい未来を築くため、過去にケリをつけようと向かう。

『ブレイキング・バッド』ファンの為の究極のファンムービー。
『道(エルカミーノ)』というタイトルがぴったりの味わい深いロードムービーなので、合わない人には合わないと思う。
ほぼ何も起きてないはずなのだが、キャラの一挙手一投足や何気ないセリフ、ちょっとしたカメラワークとかのセンスがまさしく異次元の領域、神の御技といったところだろうか。

正直『ブレイキング・バッド』の時は、サスペンスを描くのはうまかったものの、人間の描き方や演出のセンスはここまでではなかった。
それが後に『ベター・コール・ソウル』ではぶっ飛んで、その培われたキャラクター描き力が今回『ブレイキング・バッド』に逆輸入されている...。つらい。

挙げて行けばキリはないのだけど、「君は運がいい、特別なことをするのに一生待たずに済んだ」っていう一言は発明でしょう。もうあの台詞だけで2時間の価値がある。
しかも一瞬カメラが引いて、いつもの何気ない日常の中で確実に特別なことが起きて"しまってる"のが特に意識させられるのは本当にきつい。

そういえば、ジェシーが人消し屋を説得する時にダブルクォーテーションのジェスチャーするのとかもうわぁあってなったり。
西部劇のくだりも、正直で人なんか殺せなかったはずの彼が、マイクみたいな駆け引きとか戦い方をしているのは考えさせられる。
積み上げてきたものが多すぎて、台詞も事件もほぼ無くても経った時間を感じさせられて、コレが年数を重ねた作品の強みなんだとも思った。

ところで、今回の助演男優賞はトッドだろう。自分のこと勘違いしまくりナルシスト無能サイコパスが本当に絶妙で、「これは要る」ってベルト巻き直すのとか本当に最高だった。

回想で各キャラが作品のテーマ語ったり、今のジェシーを作る根幹となる思想を振り返ったりしていく中で、トッドだけが割と尺長めにただただ基地外を披露して観客をドン引かせていくの、面白いよね。
ただ本当に彼には頼むから痩せてほしかった...。あとは連れているエルカミーノが何故かネトフリカラーなのもとてもノイズだった笑

そういえばヒューエル・バビノー絶対出ると思ってたのに出なかった。今頃何してるんだろう、元気でやってるのかな。

犯してしまった罪は消せないけど、それでも流されるよりは、自分で再出発した方がまだマシ、なんだよなぁ。
あでゆ

あでゆ