MasaichiYaguchi

オルジャスの白い馬のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

オルジャスの白い馬(2019年製作の映画)
3.8
日本・カザフスタン合作による森山未來さんの初の海外主演作は、舞台はシルクロードの交差点のカザフスタンだが、名作「シェーン」を彷彿させるような西部劇が繰り広げられる。
映画で映し出されるカザフスタンの風景はいつまでも見ていたいぐらい雄大で美しく、そこで展開されるヒューマンドラマも説明的な描写や台詞を削ぎ落としていて“余白”がある。
この“余白”は作品によっては消化不良を起こしてモヤモヤが残ったりするが、本作の場合はそれが「行間を読む」ような“余白”になっていると思う。
この“余白”を象徴する存在が森山未來さん演じるカイラートで、彼のプロフィールはおろか、登場する一家とどう係わっていたのか、特にもう1人の主演・サマル・エスリャーモバ演じるアイグリとの過去をはじめ謎だらけの人物になっている。
只でさえ謎の人物を森山未來さんは全編カザフスタン語で演じ、見事な乗馬シーンもこなして魅せる。
舞台となっているのは1990年代でソ連が崩壊し、カザフスタンが不安定で社会が荒れていた時期で、更に本作は数年前に当地で実際に起こった凶悪事件にインスパイアされて製作されている。
本作の共同監督の1人、エルラン・ヌルムハンベトフはその忌まわしい事件に光を当てるようなものにしたいという意図で撮ったとのこと。
劇的な展開後に訪れるラストシーンの余韻が、私には「シェーン」のものとオーバーラップしました。