SatoshiFujiwara

血の婚礼のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

血の婚礼(1973年製作の映画)
4.4
フランスの地方都市のどことなくうらさびれた街並みはそれだけで絵になるというか映画的な想像力を喚起させるものがあるが、本作など冒頭からまさにそんな感じ。

いささか誇張されたステファーヌ・オードランとミシェル・ピッコリの露悪的な演技、ステファーヌ・オードランの旦那クロード・ピエプリュのいかにもプチブル的な小賢しさ。ミシェル・ピッコリの病弱なカミさんがミシェル・ピッコリに、そしてステファーヌ・オードランが先述したプチブル風旦那に共にいう「鶏肉は食べたのか」とのセリフの対称性の表象から想起されるそれぞれの境遇の非対称性。あるいはミシェル・ピッコリ、ステファーヌ・オードランとその娘の3人で取るディナーにおける食卓を捉えたシンメトリックに配置された調度品とカメラ位置の悪意。ルンルン気分(死語)で郊外まで「ヤリに行く」時のミシェル・ピッコリの車内にかかる音楽と、ヤッた後で戻る際のステファーヌ・オードランの車内にかかる同じ音楽の別アレンジ、または共に後部座席から前方を捉えるというここでもの「対称性/非対称性」(ちなみにミシェル・ピッコリの車内でかかる音楽が車内/車外のそれぞれのショットで音量が変わるのが妙だと思ったが、エンジンを止めたら音楽も止まった。なんのことはない、カーステからの音楽っつー設定であった。この辺も少し妙)、すべてに薄々勘付いているような雰囲気ながらも黙っていていわくありげな視線を投げかける娘、エトセトラエトセトラ…。

俯瞰的/観察的視線と細部の描き込みに内包される意味。まさに「ザ・シャブロル」的な傑作じゃねえかよ。堪能いたしました。
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