秀ポン

映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者の秀ポンのレビュー・感想・評価

2.0
前半は面白かった。落書きという瑣事がラクガキングダムと春日部の命運を左右してしまうという倒錯が、軍用車や街を囲む防衛線で上手く演出されていた。

しかし、この映画で描かれる落書きの描写がとことん「反・落書き的」なことに段々と辟易してしまった。
子供達に落書きを無理強いする悪役の落書き観がズレているのは意図的なものだし、いいと思うんだけど、それが対比していたはずのしんのすけ側の落書き観もズレていた。

例えば
・型にハマらないラクガキほど良いっていうその評価軸自体が反落書き的ではあるんよな。
・クレヨンが少なくなってきたから節約のために小さい絵を描く。これもまた反落書き的。
・「落書き、お願いします!」悲しいかなこの展開クソほどずれてるんだよな。何かのためにやる落書きはもう落書きではないのよ。
・「完成させずに終わるなんて絵が可愛そうです」いや違うのよ。落書きって無責任に始まって無責任に終わるものでしょ。

というわけで、僕からすると落書きって無目的、無責任に行われてこそのものなので、この映画で描かれる落書き観には違和感しか感じない。

更に、それに併せて被造物の存在理由、みたいな部分にまで話を広げてくるのも非常に居心地が悪かった。(偽ななこのシーンとか)
いや、こっちはそんな覚悟を持って落書きなんてしてないし……。と申し訳なくなってしまう。
(しんちゃんの落書きによって生み出されたブリーフが水を怖がるシーンなんかを見たときには反出生主義的なスタンスが発動しかけた)

結局、落書きという瑣事と、ラクガキングダム、春日部の一大事が繋がるという倒錯は、落書きが重大事になることで解消されてしまった。(ゆうまくんの大人達への糾弾とか、本当にうんざりした)
もっと気楽に落書きさせてくれよ……。と微妙な気持ちにさせられる映画だった。

──その他、細かな感想。

・クーデターっていう国の一大事にクレジットが挿入される始まり方が、なんか壮大で好き。大河ドラマっぽい?(あんま大河を見ないので分からない)

・強い者の味方のぶりぶりざえもんがめっちゃ面白かった。

・写真で壁に貼り付ける攻撃の方法ってカッコいい。

・フルーツお姉さんが面白くて好き。KOCでの最高の人間のネタを思い出す。

・「うちのみさえが、つまらないものを作ります」これも面白かった。
ゆうまくんといい、描かれる母子の距離感が凄い良い。

・自分の落書きを他の人に見られてもなんとも思わないしんのすけ達って"強い"なと思った。
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