牛猫

フライング・ジャットの牛猫のレビュー・感想・評価

フライング・ジャット(2016年製作の映画)
4.5
ひょんなことから超人的なパワーを授かった武術教師の男が、悪徳社長を懲らしめるためにヒーローになる話。

予想外に面白すぎた。

アニメで見せるバタフライエフェクト的なオープニングからがっちり心を掴まれた。

歌って踊りまくるインド映画と悪と戦うヒーロー物の親和性がこんなにも高いとは。笑って泣けて考えさせられる、最高のエンタメ作品に仕上がっていた。

まず、お調子者の兄と口が達者で気の強い母ちゃんのキャラクターが最高だった。
清楚で綺麗なヒロインも魅力的。
マッチョで武術の達人なのに気弱で高所恐怖症という主人公ラマンの描き方も素晴らしい、触れた物をコピーして自分に取り込む能力は面白かったけど、最初だけだったのが残念。あの能力を活かしてもっと戦って欲しかった。
謎のヒーリング効果を持つバイオリン弾きのお兄さんも、恋敵になりそうだったのに後半ぱったり出てこなくなってしまって、なんとももったいない。

悪者の登場シーンはインパクト絶大で良かった。砂漠の中から現れた時は笑いが堪えられなかった。その登場に因んだ能力でも持ってるのかと思いきや、見た目通りパワータイプだったのにもまた笑った。ただ急激な経済発展に伴うインドの公害問題などを絡めて、街から排出される汚染物質を力に変えて強くなるって設定は面白い。

スローモーションやワイヤーアクションを多用していたり、終始コミカルな作風だったけど、シリアスな展開からのクライマックスは、スケールもアクションも爆発していて見応え十分。
頭にターバンを纏った事によって身も心もシク教徒となったラマンと、母お手製のコスチュームのカッコ良さが遺憾なく発揮されていた。

あと特筆すべきはセットの作り込み。とにかく街の雰囲気がめちゃめちゃ好みだった。真ん中のロータリーを囲むように家が建ち並んでいて、すぐ側に湖があって、畔に神秘的な神木があって、洗練されているのだけど、どこか懐かしさも感じるような実にイカした街並みだった。
ミュージカルシーンの映像の美しさも指折り。途中の桜が舞う中でヒロインと歌う曲は「アラジン」のホールニューワールドっぽくて幻想的だった。

歌って踊るインド映画の要素に、社会的な要素や宗教的な要素も加えて、とても異色な作品だったけど、インド映画やヒーロー映画を見慣れた人でも、そうでない人も楽しめる最高に満足できる作品だった。
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