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フォトグラフ ~あなたが私を見つけた日~のクレセントのレビュー・感想・評価

4.2
彼はしがない観光客相手の記念写真屋だった。美しい娘を呼び止めてそして彼女に恋をした。一目惚れだった。娘は何気なく応じたものの家族から呼ばれて慌ててそこを離れた。彼は写真を渡し損ねた。あるとき彼は偶然に彼女の居場所を突き止めた。そして写真を渡すと立ち去ろうとした。待って!彼女は呼び止めた。どうしてコレを? 君が撮ってほしいといったから。だから君に渡したんだ。このとき始めて彼女は彼に興味を持ち始めた。自分に好意を持った男が現れたから。これが興味が恋に変わる瞬間だった。そうでしょう?大体はじめは男が女に一目ぼれ。女は徐々に身を焦がすもの。だから家に帰って年上のお手伝いさんに打ち明けた。恋人じゃないのよ。話を聞いて年上のお手伝いさんは言った。お嬢様は賢いお方。私は無学ですわ。でもご心配しないで。誰にも言いませんから。だって親には聞けなかった。彼女はそういう家柄の娘だった。しばらくして彼女にお見合いの話が持ち上がった。いいわ。両親は喜んだ。相手の男性は米国でMBAを取得していた。親として申し分ないお相手だった。お見合いの日相手の男性が言った。綺麗な方ですね。首席で卒業されたとか? はい。彼女は問われるままに答えた。どこに住みたいですか? 僕はどこでも幸せです。ただ両親とは離れて暮らしたいけど。男は笑いを取った。彼女は笑顔を見せて答えた。村がいいの。村?彼は怪訝そうに聞き返した。朝は野良仕事。午後はお昼寝よ。木の下でね。彼はキョトンしたがにこやかだった。遠くに男が映っていた。皆でパーティーをしていた。突然、彼女は席を立つとお見合いの相手に言った。これから仕事ですの。失礼します。彼女はそこに居たたまれなくなっていた。彼女の心は彼のことでいっぱいだった。お見合いのことなどどうでもよかった。それからの彼女は寝ても覚めても彼のことが気になっていった。これが恋に落ちたということだった。この監督は女性の心の変化をすこしづつ丁寧に開いていった。主役の美しい女優の彼を見る目が徐々に変わっていくのが伝わってきた。女は恋する男の顔を盗み見する。恋する瞳はこうも輝くものなのか。こうして監督は徐々に近づく男女の姿を丹念に描いていく。恋のキューピットを演じるおばあさんがなかなかいい。わたしはね。お前たちのことは最初から分かっていたんだよ。そうだよね。年寄りにかかちゃあなんでもお見通しだと監督が言っている。
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