シャチ状球体

恐竜が教えてくれたことのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

恐竜が教えてくれたこと(2019年製作の映画)
4.0
人もその他すべての生き物も例外なくいつかは死ぬ。でも、どうやって?何のために?

主人公のサムは(年齢的に)幼い哲学者として、自分以外の家族が皆いなくなった時のために孤独に慣れる訓練をしている。そんなサムが偶然出会ったテスも内向的なのに人ごみに紛れることに労力が必要そうな人間だ。

劇中では自転車が象徴的なアイテムとして何度も登場し、序盤はサムとテスが分かれ道で別れて別々の道を走っていたのに、距離が縮まっていくうちに同じ道に並ぶようになる。こういったさりげないメタファーによって作品全体が詩的な雰囲気に包まれているし、少年の目から見たジェンダーロールの意味不明さもとても真っ当な視点から描かれている。

一人でいるのが好きだけど時には誰かと一緒に過ごしたいと思うのは何も矛盾しないし、そこに暴力的なニュアンスが含まれなければ人間の過ごし方に優劣を付けることはできないのだ。
あって良かった思い出も無い方が良かった思い出も、これから形作られる思い出も全て流動的で何が糧になるかは選べない……。


※恐竜はナレーションで一言二言言及されるだけで出てきません
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