つかれぐま

シャイニング 北米公開版のつかれぐまのレビュー・感想・評価

シャイニング 北米公開版(1980年製作の映画)
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21/7/12@TH新宿#1

"Forever and Ever"

午前十時の映画祭<デジタルリマスター版>。何度も見た作品だが、劇場では初。オープニングの空撮の迫力、ホテルの広さ、走り回るダニー。

キューブリックのベスト3を上げれば、本作と「2001年」「フルメタルジャケット」。共通するのは、閉鎖環境において圧倒的強者(ジャック/HAL9000/鬼教官)が狂うとどうなるか。更に「2001年」とはもうひとつ、それをオーバールックする物言わぬ存在(ホテル/モノリス)という点も共通する。
・宇宙:冬山
・モノリス:ホテル
・HAL9000:ジャック
・船長:ダニー&ウェンディ
・殺された副長:ハローラン
うん、これは見事な一致じゃないか。

通常版よりも24分長い北米版を今回初めて見たが、個人的には通常版がベターかな。この24分が無くてもそれほど理解に影響しないし、間合いが長い(そのため集中力が必要な)本作には、119分版がちょうど良いと思う。

ジャックがウェンディにホテルへの既視感を吐露するシーンが、この北米版に追加されている(正確に言えば通常版ではカットされた)。なるほどこの台詞があると、ラストの1921年のパーティー写真にも説明がつく。だが逆に、あの写真を見た時の「訳の分からない」驚きが薄れてしまい、また解釈の幅も狭めてしまうのではないか。この場面を含む24分カットの理由は諸説あるものの、公式見解はない。私は単純に、北米公開後キューブリック自身が翻意の結果、カットという「改善」に至ったのだと思う(彼自身が119分版を最良と考えた)。

それにしてもジャックトランスは、救いようのないクソ野郎だった。父権主義、女性蔑視、人種差別。こんな前時代の「遺物」は、1921年の世界で甘ったるい音楽でも聴きながら、偉そうに酔っぱらっているがいいさ "Forever and Ever" 永遠に。二度と現世に来るなよ!

あの写真への私の解釈はこんな感じ。