穂苅太郎

WAVES/ウェイブスの穂苅太郎のレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
4.5
2020年に観た作品の中では間違いなくトップクラス。
個人的アカデミー賞では「シカゴ7裁判」「ファイブブラッズ」に並ぶ。

どうも前宣伝の仕方がやれ映像がスタイリッシュだの、プレイリストムービーだのと、そうしたおしゃれ映画的なアプローチが強かったのは失策ではないのか。

実は自分にとって音楽も、ぐるぐるカメラワークも、あざといと言われる画角設定も、色彩を使って感情を表現した演出も何一つ気にはならず物語すんなりと入り込めた。
ウェス・アンダーソンばりに映像の構図は気にかかってしまうほうなので画角を意図的に変えてきた場合、絶対に気付くと思うのだが。

つまり今作では本来癖が強いとされるいくつもの演出は、その恣意をことごとく意識させない。少なくとも自分的には大成功しているわけだ。映画でもなんでも演出の恣意性を観客に意識させた途端にその試みは失敗になる。

鑑賞中ずっと頭に浮かんでいたのは「なるほど人生山あり谷あり、だから WAVESなわけね」というフレーズ。これが唯一ノイズといえばノイズだった。勝手に思っていただけだけどね。

どうしても知りたいことがあってパンフも買ってしまったが、答えは載っていなかった。

妹の右目の横の痣はメイクなのか、そもそもそういう子を選んだか。
これ答えがどちらでも、一目で内向性を表現しているすごい演出。
穂苅太郎

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