ikumura

WAVES/ウェイブスのikumuraのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
4.0
【反復とredemption】
オスカー「予告編がなんの意味も無さない」部門本命の本作。
https://youtu.be/ckXd1ABqPZo
とりあえずA24だしLuceで気になってたケルビンハリソンJr.主演だし、
ってことで見たいなーと思ってました。
(フィルマークスさんのエントリー間違ってるので訂正をお願いしてるとこです。。別のJr.になってる😂)
もうそろそろアメリカ生活も終わりなので、日本にいつくるか分からなそうな作品から見ておこうかなと。

結果、これまた傑作(もちろん個人的感想として)。
せめてネトフリとかに入らないだろうか。。

Luceではパラレルワールドのオバマみたいな役を演じてたケルビン君ですが、
今回も中産階級の家に育ちレスリングを頑張っていい大学への奨学金を目指すリア充爽やか高校生タイラー役。
南フロリダの景色をバックに音楽をガンガンかけながらチアリーダーの彼女と車をぶっ飛ばすリア充感。
うわー、なんかしょっぱなからフラグ立ちまくり。。
もうこの人「周りの期待を一身に背負う壊れそうな爽やか模範マイノリティ青年」役しか来ないんじゃないの。。?

タイラー君、肩に違和感を感じ始めるも今休んだら進学に響く、ということで放置。
厳しいお父さんも「大したことないだろ、オラ、迎え筋トレェェェェ!!!」とばかりにしごく。
お母さんは心配しているが、義理の母ということもありタイラー君は耳を貸さない。
あと、ここまで影の薄い妹。
しかし風呂場で人知れず泣くタイラーを抱きしめたり。。
てかこの映画女の人にいろいろ背負わせすぎだな。
マイノリティであるがゆえに抱えがちなマッチョ性の負の側面の裏返しなんだろうけど。

そこからの、、うわああ、ええ、ぬおお、、
もうやめて!ケルビン君のライフはゼロよ!
と叫びたくなる展開。
(てか手術しろーー!)
見てる間はその場しのぎその場しのぎなタイラーの行動にイライラするも、
後から思い返すとなんとも胸が痛む。。
とはいえ、やっぱり、、なんだけども
(歯切れ悪くてすみません)

で、もっといろんな人が絡んでくるんだけどネタバレになるしなー。
とりあえず、前半と後半では視点も雰囲気も変わってくる。
wavesってなんだ。
フロリダの海、家族を翻弄する運命、
家族を巡る人たちのライフサイクルが少しずつずれながら重なり合い、
人生の形それぞれが似つつも異なり、ぶつかり合ってまた一つの波を起こすような。

結局この映画のテーマはredemptionで、監督もそうだと言ってるようだが、
それは罪の償いという意味でもあるし、
究極的な魂の救済の意味でもあり、
それは人間の力では絶対に不可能なんだけど、それを可能にする力もどこかで働いてるんじゃないか、
と思わせる瞬間が映画にも出てくる。
最後の方で家族や関わった人一人一人がそれを求めてる場面にも涙。
教会に懐疑的な妹が一番強く経験する、というのも面白い。
(てかHow Great Is Our Godっていう人気ゴスペルがラップになってるって初めて知った😂)
キルケゴールが「原初の無垢な状態に戻ってやり直す」ことを「反復」と呼んでいるのだけど、
wavesはそういう意味での反復でもあるのかな。。などというのは深読みのしすぎか。

あと、映像と音楽も完全にwavesって感じでしたねー。
これは予告編からもわかるけど。
ちょっとMoonlight的な。
Radioheadのあの曲が出てきたのもよかったなー。
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