てっぺい

WAVES/ウェイブスのてっぺいのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.5
【プレイリストムービー】
本作のビジュアルのような、美しい色使いが多用される眼福映画。各シーンには歌詞の和訳がつくほど意味が合致したBGMが選曲され、まるで音楽のプレイリストを映画全体で再生するような新しい感覚。
◆概要
2020年7月10日公開。
脚本・監督:「イット・カムズ・アット・ナイト」トレイ・エドワード・シュルツ
出演:「イット・カムズ・アット・ナイト」ケルビン・ハリソン・Jr.、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」ルーカス・ヘッジズ
◆ストーリー
フロリダで暮らす高校生タイラーは、成績優秀でレスリング部のスター選手。しかし肩の負傷により大切な試合への出場を禁じられ、さらに恋人の妊娠が判明。やがて決定的な悲劇が起こる。
◆感想
家族の崩壊と再生のストーリーが心にじんわり染みる。BGMを多用していて、歌詞の和訳まで着く程、シーンごとにこだわった“プレイリスト”風の選曲が珍しい。カラフルな映像美で眼福要素もあり。その意味ではA24らしい、ちょっと尖りのある映画。
◆BGM
普通なら無音で見せる、聞かせるシーンも、あえてBGMを載せてくる。そしてどれも曲調や歌詞に意味があり、そのシーンの意味と重ねている。歌詞の和訳まで大量に載る映画なんて中々ないと思う。ちなみに本作の監督は、音楽に大きくインスパイアされたと語ってます(https://news.yahoo.co.jp/articles/bd8e1d26f73889af4f62ae9393cabb2279d25f3a)。
◆カラフル
タイラーとアレクサが海で抱き合うシーン。アレクサのネイルと、灯台の灯が同じパステルオレンジで、それ以外は海と空のダークブルー。本作のビジュアル同様、とても美しいシーンでした。全体的にも色使いがとにかくカラフル。エンドロールまでカラフル笑で、エンドロールにかかるBGMは“color and sound”の連呼。まさにこの映画が駆使する音と色の工夫を象徴する、ハマりにハマったBGMだと思った。

◆以下ネタバレ

◆映像の工夫
本作は、タイラーの背中越しの映像や、表情のヨリの映像が多数で、まるで当人の目線で映画が進むような感覚。さらに、冒頭は普通の画角→タイラーが医者から宣告を受けて上下が狭まる→アレクサを殺めると左右が狭まる→エミリーとルークのデートから左右が開く→エミリーと父が抱き合って全開。タイラーとエミリーの心理状態に合わせて画角を狭め、“心と視野の狭さ”に通じる表現がなされていたのも興味深かった。
◆プレイリスト
そんな映像の各工夫に、前述のシーン毎BGMが載る事で、各シーンの感情が音分けされて、思い起こせば映画全体が一つのプレイリストを聴いているような、そんな工夫の詰まった構成にもなっていたと思う。

技術的な事ばかり書いてしまったけど、ストーリーも、崩壊していく家族が再生していく兆しが見えたいいとこで終わる、心にじんわり残る映画でした。エミリーがルークの父が泣くのをタイラーと重ねて、家族の再生に向かい出すシーンがとても良い。軸もしっかりしたいい映画でした。
◆ トリビア
◯製作はアカデミー作品賞を受賞した『ムーンライト』や『ミッドサマー』を始め設立後わずか10年足らずでアカデミー賞の常連となったスタジオA24。(https://www.phantom-film.com/waves-movie/)
◯ ワールドプレミアを行ったテルライド映画祭の時点では、まだカニエ・ウエストの楽曲「I Am a God」の使用許可を取れていなかった。(https://news.yahoo.co.jp/articles/54df31d58ec9b52f5b0e6d032b325b9ba775931e)

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https://www.instagram.com/teppei_movie/
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