あ

WAVES/ウェイブスのあのネタバレレビュー・内容・結末

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

配給 ファントムフィルム
字幕 松浦美奈

A24祭りスタート!!
今年楽しみにしていた作品のうちのひとつ
ストーリーをハッキリと見せなかった予告に これはあまり情報入れずに行った方がいいのかなと思ってシャットアウトして初日に臨んだら大正解

ケルヴィン・ハリソン・Jrはルース・エドガーでもit comes at nightでも圧倒的な演技力だったので 今作も楽しみにしていた
完全にビジュアルに騙されたな。。
めちゃくちゃ嫌な奴じゃないか。。と観ながら衝撃だった
こんな胸糞&1ミリも共感できないキャラで2時間か... (ケルヴィン・ハリソン・Jrが演技うますぎるのでさらに最悪に見える)
これで更生していくみたいな作品だったらかなりキツイなぁ...と捕まったあたりで吐きそうになっていたら後半の展開に驚いた

観た後に聞いてよかったと思ったけど A24映画の解説トークで小柳帝さんが「前半はスプリング・ブレイカーズ、後半はムーンライトという感じです」と仰っていて
(スプリング〜は観ていないのだけれどなんとなくわかる)
この構成は知らない方が絶対楽しめるのにツイッターとかで前半はこう、後半はこう、みたいに書いてる人がわりとたくさんいておいおいもはやネタバレだよ、、、と残念な気持ちになった 知らずに初日に観に行って本当に良かった

前半の派手な感じ 正直自分はアメリカのティーンだったら絶対やっていけないな、、と思ったのはさておき
前半と後半でトーンを思いっきり変えてくる手法はタイトルどおり「波」そのもの

モラっぽい父親 再婚 義母の介入できない壁 期待されるが故の圧力 上に期待されすぎて影の薄い下の子
救いのない家族の歪みは本当に苦しく タイラーの苛立ち方が父親に似ているのも観ていてかなりキツかった
妊娠したら産むのは女の方だし いくらなんでもあの態度は酷すぎる
彼が自分の行動を省みるのも結局は彼女が亡くなってしまってからだし 本当にモラハラの典型でゾッとした きっと父親になっていてもうまくいかなかったと思う
SNSですべての情報を追う人物たちも見ていてものすごく「今」の映画
起こってほしくないことが起こりそうな不安を撮るのが巧い監督だなと何度も目を塞ぎたくなる

一転して後半は妹のパート
このパートに切り替わるときに目から始まるのがうますぎて震える
彼女はきっといろんなものを見てきた
加害者の妹として友達も離れている
自分が救えたらと兄のことでずっとしこりがある 彼女がいちばんタイラーのことを想っていたと思う
ルーカス・ヘッジズくんが良い人すぎて 本当にすべてのシーンで泣きそうになった
好きなひとと一緒にいてもどこか暗さが残っている姿は痛々しい

赤と青の使い分けは何で分けているのか明確にはわからなかったけれど
元々タイラーが持っていた色はブルーなのかなという気がした
単純に負の感情や怒りで赤というわけでもなさそう 赤の中に青が入ったり 突然黄色が入ったり 同じブルーでも悲しそうに見えたり穏やかに見えたりもする
怒りの中に悲しみがあったり感情は様々な表情を持つ それこそ波のようなもの
サイレンが鳴るときやレスリングのシーンで赤青両方使われるのは印象的だった
特にレスリングの試合で倒れたタイラーの青の周りに赤で取り囲んでいる色彩が彼の圧迫された状況や これから起こることを予感させるようで恐ろしい
血の赤が忘れられない
事件後色彩が失われた黒になったときがかなりキツかった
金髪が裁判の時に黒になっていたのも 彼が転落した様子を映していたようで 喪失感が大きかった (あの金髪はフランク・オーシャンを意識してるよね

エミリーのパートのブルーはずっと寂しそうだったけれど ルーカス・ヘッジズと出会ってその青が明るく見えてくるのが救い
エミリーは自分の家族がうまくいかなかった分 恋人には幸せになってほしいと願っていたんだと思う
エミリー本当に良い人だよね
裁判の最後に家族が泣き喚いている中 彼女だけが相手の家族の姿を見て複雑な表情をしている 周りのことをよく見られる良い子なのに...と苦しくなった
前後半で2組のカップルを対比させるように映し出す撮り方が本当に巧い

人生は一筋縄ではいかなくて 楽しいことだけじゃなくて苦しく辛い
他人とぶつかることもある うまくいかないこともある
ひとりで抱え込んでしまうのか きちんとそれと向き合いながらそれでも前へ進むのか
あの兄妹の違いはそこだったと思う
タイラーは家族に拠り所がなかった
エミリーはルークがいた
自分がいちばんしんどいときや辛いときに寄り添ってくれる人って本当に大切にしなきゃいけないと思う
お父さんにも救いがあってよかった
海外のポスターはお父さんとエミリーのシーンになってるものもある!良い!

タイラーが写真を見てはじめて心から恋人のことを想っている姿が救いだった

音楽は若干過剰な気もしたけど 同じ曲を使って工夫されていたり ピアノを弾くタイラーを映すことで彼の繊細さを描く手法が巧いと思った ピアノって楽器の中でも触れてその強さやタッチで音が変わる楽器だからすき あのシーンがあるかないかで彼の印象はかなり変わる

感情でアスペクトを変える表現に関してはドランがMommyでやっていたのであまり新鮮さはないなと感じた 惜しい

予告で流れたgodspeed流れんかったなと思ったらパンフにカットしたって書いてあった 観たかった。。

感情 生き方 人との付き合い方 いろんな波があるのが人生
冒頭にわかりやすく提示されたcarpe diemという言葉が響いてくる
A24らしい良作 時間あればサントラ聴き込んでおかわりしたい オレンジのネイル塗ろうっと
あ