ルッキオ

WAVES/ウェイブスのルッキオのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
4.5
音楽は映画を邪魔しない。
2010年代以前のセンスとは違う20年代の映画を感じたような気がして、かなり好き。
ポスタービジュアル以外の情報を一切入れずに観たので、どこへ向かって行くのか全く分からない構成が斬新に感じられました。

クロースアップを多用した演出は、人と人との距離感が希薄になりがちな現代性を感じるし、ちゃんとテーマと合ってる。
体を密着させるレスリングをやってるタイラーが家族とハグするシーンはほとんどない。
他人のような肉親にハグをするのは別の登場人物。
スマホのやりとりが人間関係に致命傷を負わせるというのは距離感の問題そのもの。
ポスタービジュアルを見ても分かるように、やっぱり距離感がテーマになってるように思いました。

家族の距離感、恋人の距離感、夫婦の距離感、兄妹の距離感。
一度壊れてしまった関係を再構築させるのに必要なのは「時間」。
家族は家族を見捨てない、というメッセージも感じました。

このように、一見おしゃれ映画に思われそうだけど、本編は至って計算されつくした構成。
構成力の中に新しいセンスを感じさせるバランスがいいんだと思う。
是枝作品のようなタッチで描かずともちゃんと感情に訴えるものが作れることにも、20年代を感じたりして。

実際こんなに音楽鳴りっぱなしなのに、音楽よりもストーリーが、テーマが最後には心に残る。
「ベイビードライバー」のようなテンションアップの使い方じゃなく、エモーションを掻き立てる選曲のどれもがセンスが良すぎて、改めて構成力に脱帽。

新時代を感じさせるお気に入り映画だったけど、一回きりの体験のような、二回目は別の感情が起こりそうな気もする、そんな感想。

PS;デパートは結構混んでたけど祭日の映画館はガラガラ。人が少ない換気機能のある映画館が実は一番安全な屋内施設な気がします。
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