unknown

WAVES/ウェイブスのunknownのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.8
2020/08/12

waves

思春期の危うさ、家族とのコミュニケーションの難しさ、差別意識、男性的思想の脆さなど、複雑なテーマを、美しい映像と心情に合わせたらしい(歌の意味がわからないもの多数)挿入歌によって表現した良作。
カメラの画角が徐々に小さくなり、また広がっていくという構成は、登場人物の心情描写を表現していて、1番小さいほぼ正方形の画角での映像は、起こっている事態の深刻さと顔のアップによる逃げ場のない感じが非常に息苦しく、観客に追体験させるような嫌らしさがある。
男性主義的なものの脆弱さは共感するところがあり、今日的なテーマであると思う。部活が軍隊の訓練のようであることや、父とのコミュニケーションが腕相撲というのは分かり易すぎる気がしないでもないが、見ている分には面白いが実際そんな環境であったら嫌だろうなと。
妹とその彼との傷ついたもの同士惹かれ合うというのもラブストーリーとして真っ当。お互い傷を癒すように、人生を進んでいくと考えると胸に染みるものがある。

物語の構成上、仕方がないかとも思うのだけれど、一つ不満というか、辛かったとも言えるのかもしれないが、物語前半の主人公である兄があまりにも救われないところは好きではなかった。
勿論起こした事態は許されるものではないし、取り返しのつかないことだけれど、少なくとも悪意があったわけでもなく、ある種の社会的抑圧による被害者でもあるわけで、それが最後に祈るようになるというだけではあまりにも救いがないなと。
せめて映画くらいでは、現実とは違う希望が欲しかった。
ただそう思わせるだけこの映画に感情移入したわけで、やはり嫌いにはなれない。それくらい思春期の危うさを見事表現していたと思う。誰にでも、一歩間違えたら、そうなってしまっていたかもと、思い当たる節があるんじゃないか。思春期にとったら身の回りこそが世界の全て、そんなことを思い出させてくれました。
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