全米雑誌大賞を受賞したノンフィクション小説を映画化。
二人の娘と暮らす、ジャーナリストのマットと舞台女優のニコル。ある日、ニコルが末期ガンの宣告を受ける。
"It's not fair that I'm the only woman who knows how special you are."
良作。ガンや難病を出汁にして金儲けをする"泣ける映画"は心底嫌いなので、半信半疑で観始めたのだが、本作はその類の作品ではなかった。
切り口が巧い。ともすれば、チープなお涙頂戴映画になってもおかしくないプロットだが、末期ガンによる余命宣告を受けたニコルの闘病生活ではなく、彼女を支える夫マットと親友デインの友情に焦点を当てた事により、示唆に富んだ良質な"家族"ドラマに仕上がっていた。"死"というものに真摯に向かい合っている点が好印象である。
ガンを宣告された日を軸に、その前後に起きた出来事を交互に描いていく構成が特徴。
音楽の使い方は扇情的な気がしなくもなかったが、ケイシー・アフレック、ダコタ・ジョンソン、ジェイソン・シーゲルの確かな演技力のおかげもあり、しっかりとしたキャラクタードラマの積み上げがあったので、最後はうるっと来てしまった。
ケイシー・アフレックの鬱、無気力姿を見ていると、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を想起せずにはいられない。
この物語の隠れMVPが、グェンドリン・クリスティー(『GOT』ブライエニー・タース役)扮する通りすがりの女性ハイカーであったことは忘れずに書き残しておきたい。
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