Kazu

コリーニ事件のKazuのネタバレレビュー・内容・結末

コリーニ事件(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます



リーガルサスペンスではありますが、私個人的な受け止め方としては『サラの鍵』『手紙は覚えている』に近いなぁと感じました。

冒頭から事件の犯人がわかっている。
じゃあどんな話なんだ?
今作の焦点は、動機、そしてその動機はどこから始まっているのか?です。

1940年代から事が起こり、1960年代を現代の視点で振り返る、そしてドイツの負の記憶と向き合うストーリーです。

ドイツは日本よりもよっぽど過去と積極的に向き合い、過去を風化させないように多くのナチス時代の作品が今尚製作されています。

それでも、今作の焦点である「法の落とし穴」ドレーアー法で多くのナチス加担者が実刑を免れていた事をはじめて知りました。

共犯規定による大量の時効成立
犯人コリーニが抱える社会制度に対するやるせなさが彼を通して痛切に描かれています。

法律というものは、作る人は気づいているが、多くの人が気づかない間に可決されている事が多く、そしてその法律に関わる事になって初めて気づくのです。

今作の原作発表後、ドイツが自国法務省に調査委員会を立ち上げたと言うのだからすごい!
法律というものは、過去の失敗を記憶し、それを改善しようとするものだと、

主役カスパー弁護士役のエリアス・ムバレクという俳優さん、まったくの初めてでしたが存在感のある素晴らしい演技でこの作品をギュッと締めていました。

カスパーは母がトルコ人、彼も移民という背景があって、常に社会と闘い続けている男なんだという表れかなぁ〜
🥊スパーリングする姿が戦闘モードに入る準備の様に描かれています。

恩人を殺害した男の弁護を受け持つ弁護士、なんとも運命の悪戯のような話ですが、正義にただひたすら立ち向かい、動機という真実を見出そうする彼の姿はとても勇敢だったと思う。

そして、コリーニを演じる、フランコ・ネロがセリフの無い、語らず表情だけの素晴らしい演技で訴えてきます。
少年時代から彼の心はずっと閉ざされたままだったんだろう、
独身で友達もいない、頑なに口を閉し黙秘を続ける、そんな彼が母も姉も亡くし天涯孤独となった時、報復を決行する。

最後に彼を語らせたカスパー弁護士、悲しいけれどコリーニはもう思い残すことはなかったでしょう。
素晴らしい音楽が流れだし♬
イタリアの地でボールを追う父とコリーニの姿が情緒感あふれる締め括り、粋な計らいをする監督さんだなぁ〜
Kazu

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