てつこてつ

コリーニ事件のてつこてつのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
3.3
「ピエロがお前を嘲笑う」「ブラッド・レッド・スカイ」もそうだけど、最近のドイツ映画は、ハリウッド映画にも負けないほどエンタメ要素が高く面白い作品が増えてきた。

この、刑事事件弁護士が書き下ろしたベストセラー小説の映像化も法廷サスペンス物としては、そこまで難しい裁判用語が多用されることもなく、一視聴者としてもストーリーが分かりやすくテンポもいい。回想シーンの挟み方も巧い。

真相にナチスの負の歴史が深く絡んでいるというのは、いかにもドイツ映画らしいが、実際にこの小説の出版を機に、戦犯に関する特別条例の見直しのための調査委員会が実際に立ち上がったと言うのだから、ドイツの法曹界においても意義があるものだったんだろうな。

人望も厚い大企業のトップの射殺事件。彼の多大な庇護を受けながら弁護士資格を取得できたトルコ系の主人公が、何と、恩人に三発もの銃弾を撃ち込んだ何も語ろうとしない犯人の国選弁護人を引き受けるという流れ、被害者の孫娘との駆け引きなど見どころも多い反面、血縁関係は無くとも被害者と明らかに利害関係があるのに、対立する立場の弁護人なんて実際に務められるものなのか?という大きな疑問が引っかかる。

また、法廷サスペンス物の醍醐味である検察側との丁々発止の攻防などが見られず、ただただ一方的に新人弁護士に都合良くスルスルと事件が解決していく流れが、やや安易で面白みに欠けるところもある。

まあ、それだけ、最終的な焦点となる1960年代末にドイツ連邦議会が満場一致で採択した法律の一箇条について、今のドイツの健全な法治社会による統治の妨げになると、原作者の一石を投じようとした強い思いがヒシヒシと伝わってくる。
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