ゆかし

コリーニ事件のゆかしのネタバレレビュー・内容・結末

コリーニ事件(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

終盤からの怒涛の展開に圧倒された。

前半部分は主人公カスパーの行動に「ちょっと…」と思う部分が多かった。
顔見知り程度ではなく恩人、親代わりレベルの人が被害者になっている事件で、これまた親しい間柄の恩人の孫娘から「やめて」と言われても押し切って犯人の弁護士に就いたのに結局はその親しい間柄を利用して被害者宅に上がり込み情報を集めているところ(それはせこくない…?)とか。
故殺→刑期が軽く数年で刑務所から出られる/誅殺→刑期が重く終身刑も有り得るの争いをしている主人公カスパーと相対する被害者側弁護士マッティンガーとが弁護期間中に仲良く出かけているシーンはそれぞれの依頼人に不利益が出ると疑われないのか、とか。
その出かけた先で「検事は自分と旧知の仲だ、犯人に自白させたら誅殺を故殺判決にしてやろう」と持ち出されたシーンもやばかったけど。笑 マッティンガーは教授としてめっちゃ持ち上げられているけど信頼性一気に墜落したわ。笑
あと、カスパーが恩人を殺害した犯人の弁護はやっぱり辞めよう…となったときマッティンガーが「法廷は私情を持ち込めるようなや柔なところではない(から続けるべきだ)」と後押ししたのに取引持ちかけてめっちゃ私情を持ち込んでるやん!笑


そこからの後半の謎が解き明かされていく展開がすごい。
ドレーアー法が何に加担していたのか、この法律によって見逃されてしまったものが何なのか。
ドイツは現在でも街中にナチスの行いと犠牲者を記す碑があり戦争の罪に向き合うことと過去から学ぶことを大切にする国だというイメージがあったので、ドレーアー法というものが成立していたこと、それによって多くの残虐行為が免責されてしまった事実に驚いた。
コリーニのお父さんのシーンは本当につらい。戦争とはいえ、戦後に可決されてしまったひとつの法律によって正当に裁かれることがなくなってしまったことは苦しい。
自分の父にされたことをそっくり模倣してハンス・マイヤーに銃を突きつけたコリーニの表情よ…

もとは小説原作の映画だけど、この小説が大ヒットしたことによって出版から数ヶ月後にはドイツ連邦法務省が調査委員会を設置することになったらしく、表現の持つ力も強く感じた。


今回、詳しく知りたかったこともあって久々にパンフレットを買った。
「些細な法文の文言の違いが、いかに人々の人生に深く、取り返しのつかない影響を与えるか」
「映画『コリーニ事件』は警告する。「わが国は法治国家である」と信じて疑わない人に対して、本当にそうなのかと。」
「過去に目を閉ざす者は未来に対して盲目になると述べた偉人がいた」
めちゃめちゃ重いし刺さるし日本にも当てはまる…。
ゆかし

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