松井の天井直撃ホームラン

任侠東海道の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

任侠東海道(1958年製作の映画)
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☆☆☆★★★

東映オールスターキャストによる一大豪華娯楽痛快作。
監督は時代劇の巨匠松田定次。

これは見事。オールスターキャストだと何かと登場人物全てに役をふらなければならず、その為に生じる強引な脚本や、時間配分のテンポの悪さ等が付き纏ってしまうのだが、この作品はその辺りの弊害を全く感じさせない上に、脚本上でのキャラクターの振り分けがしっかりと行き届いているので安心して観ている事が出来る。

敢えて言うと、終盤に至ってやっと登場する市川右太衛門の登場場面をたっぷりと見せる為か、若干映画自体が停滞するものの、気になる人には少し気になる…って程度なので問題は無い。

確かにオールスターキャストってだけでも観ているだけで楽しいのだが、錦之助の喧嘩っ早いキャラクターの妙に、大友柳太郎との兄と弟の様な関係。
片岡千恵蔵の貫禄に、市川右太衛門の妻を思うが為の板挟みになる悲しみ。(この2人って、この作品中では共演場面が無い)

しかし、しかし。この作品の中で1番の見所と言えば、それらオールスターキャストにも決して負けず劣らずの、素晴らしい悪役オールスターキャストが勢揃しているところにもあると言っても過言では無いでしょうね。
月形龍之介を始めとして、山形勲に小沢栄太郎や進藤英太郎等々。様々なタイプの悪役達が素晴らしい演技力で躍動している。

特に錦之助と月形龍之介のやり取りなんてもう最高ですよ。
その悪役オールスター達の憎たらしい顔、顔、顔。
優れた悪役が居てこそ主役が引き立ち、作品はより面白くなる。その言葉をたっぷりと味あわせてくれて、時代劇の面白さを堪能出来る作品ですね。

(2009年3月14日 新・文芸坐)