MasaichiYaguchi

花と雨のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

花と雨(2019年製作の映画)
2.9
「ガリーボーイ」「WALKING MAN」とこのところラップやラッパーを題材や主人公にした映画が公開されているが、この映画はヒップホップアーティストのSEEDAが2006年に発表したアルバム「花と雨」を原案に、SEEDA自身のエピソードを交えながら描いている。
ラップには「ライム」「リリック」「フロウ」という3つの要素があるが、この中でも特に「フロウ」が重要ではないかと思う。
斬新な映像とキャストのラップをはじめとした熱演で綴られる、ある青年の成長物語は、残念なことに度重なる暗転と、脈絡の欠如で作品の「フロウ」が寸断されているように見える。
暗転は時間や場所を変える「転換」として使われる手法だが、本作では暗転で流れが分断されている。
更に展開の唐突な「飛躍」、この「飛躍」も伏線を張る意図で使われるが、それは飽くまで後で何らかの形で「回収」されることを前提としている。
確かに状況の説明過多は興醒めで観客の想像に委ねることもあるが、本作の場合、幾つかの謎、説明不足は胃もたれを起こしてモヤモヤする。
ただモヤモヤする部分に目をつぶれば、描きたいことは確かに伝わってくる。
だが、先に公開された2作品の主人公に比べ、主人公は食や職に困る程貧しくなく、逆に恵まれた家庭に育ったボンボンに見える。
だから物語の中盤から畳み掛けるように降りかかる不幸が「身から出た錆」のように思え、いまいち感情移入し辛い。
素人考えに過ぎないが、もう少し内容を整理して構成を変えたら、もっとスッキリとしたものになったような気がする。