カツマ

ガンズ・アキンボのカツマのレビュー・感想・評価

ガンズ・アキンボ(2019年製作の映画)
3.9
いきなりの絶体絶命、死の間際。まさかまさかの生きるか死ぬかのデスゲームへの強制参戦、修羅の穴。両手には埋め込まれた2丁拳銃、諸刃の剣。インターネットの波に溺れるオタクにはあまりにも無謀なミッション、残念ながら死ぬのはほぼ確定の地獄絵図。のはずなのに、奴はなかなか死にはしない。意外にもしぶとい男、ガンズ・アキンボがネズミのように逃げる逃げる。

何故か、良質なB級映画への出演が多いダニエル・ラドクリフによる、その好例に当たるB級臭全開の一本がこちら。闇サイトへの過剰な書き込みで逆恨みを買った冴えないオタクが、恐怖のデスゲームに巻き込まれるという荒唐無稽なお話で、両手に銃を括り付けられながれ四苦八苦するラドクリフを拝める一本でもある。追ってくるのは連戦連勝の女殺人鬼。死ぬか殺すか、残された選択肢は一つしかない。能無し彼女無しのオタクにこんなミッションこなせるわけもなし!と思いきや意外にも頑張るガンズ・アキンボなのであった。

〜あらすじ〜

オタクのマイルズは、彼女のノヴァにはフラれ、仕事もクビ候補と散々な現状。マイルズはプライベートでの非リア充を発散するかのように、ネットへの攻撃的な書き込みを連投、その日、標的にしていたのは違法なデスゲームサイト、スキズムだった。だが、運営側からアカウントを特定されたマイルズは、スキズムを主催するリクターという男によって、無理矢理スキズムに参加させられることになってしまう。両手に銃弾を括り付けられるという魔改造を施されたマイルズ。追ってくるのはスキズムで負けなしの恐怖の殺人狂、ニックス。マイルズはニックスにマシンガンをぶっ放されては逃げ惑い、パンツにスリッパという格好で街を駆けずり回ることに。ノヴァに助けを求めるも、両手の銃を見せた途端に車を叩き出される始末であった。どう見ても勝ち目の無さそうなマイルズだが、次第にニックスへの反撃を試みるようになり・・。

〜見どころと感想〜

程よいバイオレンス描写とスピード感、シンプルな逃走アクションといい、何気にエンタメとしてのバランス感に優れた作品である。やはり両手に銃を取り付けられる、というアイディアが抜群に効いており、手が使えずにパンツを履くにも苦戦する主人公の姿がひたすらに哀しい。それでも、どうしようもないオタクが自身のアイデンティティに向き合い、少しずつ成長していく姿が何気に熱く、最初は好きになれないキャラクターに段々と愛着が湧いてくる作品でもあった。

主演のダニエル・ラドクリフは髭をはやしての汚い風貌がオーソドックスなオタク像に見事にマッチ。ハリー・ポッターの余韻を遥か彼方に吹き飛ばすここ最近の振り切れ具合が炸裂している。そして、今作のMVPは何と言っても殺人狂ニックスを演じたサマラ・ウィーヴィングだろう。ヒューゴ・ウィーヴィングの姪でもある彼女は、出演作品が相次ぐ売れっ子だが、それを証明するかのようなクレイジー具合で、画面を完全に掌握。逃げるラドクリフ、追うウィーヴィングの構図だけでお腹いっぱいに楽しめる作品で、この二人の絵力が今作をただのB級映画から逸脱させている。

金田一少年の事件簿時代の堤幸彦を彷彿とさせるようなグルリと反転するカメラワークだったり、大胆かつ遊び心に溢れた趣向がスピード感たっぷりに展開される。エンタメ性がかなり高いため、主人公にやたらと弾が当たらないな!?などのツッコミはやめて、絶体絶命の崖っぷちに立たされたオタクの頑張りを応援してみてほしい。自分を変えるにはここまでメチャクチャなお灸が必要?いやいや、そもそもこんなゲームで生き残ること自体がきっと無理ゲー。映画だからと割り切って楽しんでほしい破茶滅茶な一本でした。

〜あとがき〜

変な作品ばかりに出演しているイメージもあるダニエル・ラドクリフですが、出る作品はちゃんと選んでるみたいですね笑
サマラ・ウィーヴィングとの鬼気迫る逃走劇がとにかく楽しいので、一体どこで反撃に転じてくれるのか!?と期待しながら見てほしいです。

グロ描写もちょうどいい塩梅なので、その手のバイオレンスが苦手な人にもお勧めできそう。間違えて続編とか作られないかな?とか期待してしまう不思議な吸着力を持った作品でした。
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