このレビューはネタバレを含みます
これはなんだろう。不思議な多幸感に満ちている。やばい。それがずっとは持続しないのが残念だけど。でも今泉監督はすごい才能だぜ。
そして田中圭の田中圭力は尋常じゃない。
OP、女の子の花を選んであげている時の安心感、安定感、謎の可愛さ、そして絶妙なほんの少し漂う色気。これはモテるわ。田中圭ファンの女性が多いのわかったけど、これは参考にしようがない。すごい。田中圭が花屋の店頭に立っているのをずっと見ていたい。
長回しのゆるい雰囲気もたまらん。
そんであの店のデザインもどんだけセンスいいんだよ。
ここで田中圭の魅力を最大限強調しているからこそ、結局は「田中圭はモテる」という話でしかないプロットに見事な説得力を持たせている。すごいわ。
岡崎さんや志田さん、そして謎のともさかりえも含め、主人公・夏目を好きになる女性陣の魅力の切り取り方、個々人の演技も素晴らしい。岡崎さん初めて存在知ったけど、あんなラーメン屋いたら毎日通うわ(笑)。ちゃんと真面目に働きそうな愚直さと可愛らしさ、たまらん。
ただ!ここで一旦苦言を呈すけど、この映画の欠点をいいます!ていうかこの映画に限らないけど!ラーメンを食ってる最中に長めの会話を始めて、その間の麺をすする手が止まってるなんて描写はマジでやめてくれ。伸びるし冷めるだろ!ほかの人はどうか知らんがラーメン好きとしては許せない。食ってから話せ!って考えるとラーメンって映画向きじゃないのかな(笑)。
さて、落ち着きを取り戻しまして(笑)
夏目の姪っ子のあの子の自然さもすごい。子役に自然な演技をさせられるのは巨匠の証だって宇多丸さんが言ってたけどさすが。
そしてともさかりえとその旦那との噛み合わない会話もちょっとコントっぽいけど大好き。田中圭ツッコミもうまいな。
そして長回しで心情の変化や気まずさ、葛藤を描く手法も素晴らしい。
宏美と陽子が夏目の店に来てずっともじもじしてたシーンも愛おしいし、時間の流れがゆったりしてて映画を見ているのを忘れそうなくらいだった。
今泉監督はちょっとテーマをセリフではっきり言わせがちな傾向があるけど、今回の「相手に告白するのは自分のため」「気持ちを伝えないよりはどんな結果であろうといったほうがいい」ってまたも恋愛に関する卑近だけど深遠なテーマを掘り下げていてさすが。
エゴでしかないとしても気持ちを伝えたほうがいいというこのメッセージ。卒業シーズンちょっと前に公開しているのも狙いなのかな。
愛がなんだのその先を見せてもらった気がする。
でも色々気になる部分もある。木帆はなぜお父さんがイタリアンの職人だったことを知らなかったのか。
そしてなぜ夏目は知ってるのか。なぜお父さんと仲良くなったのか。あいつは何歳で何年あの街で花屋をやっているのか気になってしょうがない。
それに最後は邦画でうんざりすることの多い延々と手紙読み上げる演出になっててげんなり。
あそこまで全部セリフで言う必要あるかね?
でもさすがの一本でした。とにかく雰囲気がいい。それが全て。