半兵衛

未亡人館の惨劇の半兵衛のレビュー・感想・評価

未亡人館の惨劇(1971年製作の映画)
3.9
この作品を見るときは絶対ネタバレ解説を読まない方がいいかも、面白さが半減するから。

冒頭の手持ちカメラによる主観撮影と殺害シーンはへっぽこな出来映えで(トンカチが顔に当たるとぐにゃっと曲がるのを見たときには目を疑った)がっかりするし、その直後に主人公の少女・エリーが目を覚ます流れも意味不明でジャーロっぽいことをやろうとしてことごとく失敗している印象に。

それでも低予算&少ない日数という劣悪な条件で撮っていることが丸わかりなチープな演出や、いかにもC調な都合のいい展開(冒頭捜査に来る探偵とエリーのやりとりで彼女のバックグラウンドをすべて説明するところなど)が妙に癖になってついつい見てしまう。それに冒頭をはじめ所々で感じるしっくりとこない話の流れや言動も気になってくる。

やがて冒頭の殺人は少女の母親が殺された場面であることが判明し、一人身の主人公は孤児院に入れられる。実はその孤児院には秘密があり…という流れは面白いが、最初からいきなり秘密を説明するのでげんなりする。普通なら隠れた違和感を小出しにして、終盤にその秘密を見せてお客さんにショックを与えるのにこれじゃ台無しじゃないかと。

しかし後半、謎のマスクマンの出現や悪人しかいない登場人物などで話が二転三転し物語の着地点が解せなくなり目が離せなくなってくる。そこから物語は怒涛の展開に向かい、後半5分で凄まじいどんでん返しが待っている。物語の合間に見せる謎がすべて結びつき、同時に映画の見方がすべてひっくり返る衝撃。まさかこんなへっぽこな作品でここまで巧妙な仕掛けがしてあると予想していなかったのでショックが更に大きくなる。

そしてそこからラストのだめ押しとも言えるオチに驚き、悲劇とも因果応報とも言える地獄。本場のジャーロやホラーでもここまでしっかりした構成は中々無いのでは。

こんな映画に出演していることに驚きの孤児院の院長役グロリア・グレアム、確かに40を越えた彼女の姿には往年の美しさは無いけれどそれでも綺麗だし、女優としてのオーラと演技はまったく衰えておらず見るものを圧倒させる。彼女の演技力が孤児たちを暴力などで支配する院長のキャラを単なる悪人にせず、人間としてのバランスを失ってしまった悲劇の女性のニュアンスをもたらし映画に深みを与える。

孤児院に住んでいる孤児たちの描写に手を抜いていない演出も見事で、後半エリーがこんな非道な孤児院を脱走しようと言っても誰も賛同せず「どこへ行けばいいの?」と叫ぶ悲しさに胸をうたれる。

主人公エリーを演じるメロディ・パターソンの気丈な美しさが勝ち気なキャラとあっていてはまり役に、少女っぽいあどけなさがあるのも○。

ちなみにパッケージはジャーロっぽいけど、そんなに殺人シーンはないし迫力もないからそっち方面は期待しない方がいいかも。
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