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サルカール 1票の革命のfieldのレビュー・感想・評価

サルカール 1票の革命(2018年製作の映画)
3.7
スクリーンを逃してしまったので円盤で。
ヴィジャイさんとムルガダース監督のタッグだとThuppakkiやKaththi がエンタメと社会派で娯楽として楽しめたが、激しいアクションやダンスの娯楽も盛り込みながら今まで以上に政治色を強く打ち出してる。暗くならずに訴えてくる観やすさとこのメッセージ性に観た後の余韻は清々しい。
サルカールは政府や統治の意味だそうだ。

米国在住のGL社社長スンダル・ラーマスワニ、あだ名はチンギスハーン。冒頭から西欧系美女を従えスタイリッシュなダンスのヴィジャイさん。
自家用ジェットでチェンナイまで投票に来た筈が成り済まし投票により投票が出来ず、小さなミスで済ませようとする姿勢を問題視するスンダル。
成り済ましが出来てしまうのも恐ろしい事だが、政治家は勿論、世論の関心の低さが窺える。個人から見ればたった一票だが貧困から票を売り管理する側も抱き込み買収によって悪徳政治家が動きやすい土壌を作ってしまってる。
たった一票の大事さ、選挙法49条Pを行使してメディアを巻き込んでの手腕はモンスターとまで言われた敏腕社長なだけはある。横柄にも取れる自信家な部分は弁でメディアや政治家相手に発揮してる。高利貸しで焼身自殺した親子に対する目も外から見る目として海外在住という事か。
スンダルの前例を受け立ち上がる各地の不正投票された人たち、圧勝を目前にたかが一人と侮っていた悪徳政治家AMMK党首マシラマニと二番手のレンドゥ。レンドゥのラーダー・ラヴィさんも悪役として苦々しい嫌味な良い顔してたな。二人とも実際に政治家をしてたかしてるようでその辺の認知度も含めての配役だったのだろうか。
殺し屋と埃舞いスローを多用した激しいワイヤーアクションも楽しかったが、再選挙まで差し戻し睨み合う状況に対抗出馬を決意し更に全国区へと広げる。党首のブレインを果たす娘コマラヴァリの悪女っぷりは怖かったな。ヴァララクスミー・サラトクマールの凄味のある演技が良い。ここの駆け引きも緊張感あって楽しめた。

権力と金に目が眩んだ政治家相手に金ではなく人だと自分を形作るものは人と説く。誠実さもあるスンダルがチェンナイに出稼ぎに来た故郷難民に対し持ち前の演説力で民衆を味方に付け現代的に配信やメディア論争で切り開いて行く。金の為に不正したカウシクのヨギバブとは酒を飲み交わしコミカルなやり取りが微笑ましかったがサポートに何故か回ってくれてるな。
貧困から票を売り、貧困を出す為に動かない構図も可笑しな話だが任期中に何もせずエンブレムを盾にしてきた政治家。炙り出し形勢不利に投票を促すリーダー像も逆転劇も面白かった。メルサルと同じクロスポーズは胸が熱くなったが、民衆に対し暴徒のように振る舞う警察の場面では新しいタミルナードゥだと宣言する勇ましさ。戦うんだと一票の格差を繰り返す歌に希望を感じさせる。

単一政党の民主主義は危険と謳いながら鍵となる投票率に先ずは自分で考え投票へと促す意味合いが大きい。苦闘の末に亡くなった若者への賛辞も忘れない。表面上しか知らないがたくさんの犠牲が政治によって生み出されたのだろう。

義妹ニラーのキールティはロマンスが盛り込まれなかった分控えめで大人しい役回りだった。
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