万里

失くした体の万里のネタバレレビュー・内容・結末

失くした体(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

良かった…
序盤の20分、切断された手が意思を持って街を歩いているというあり得ない状況なのに、その手を応援していた。アニメーションの作り込みがしっかりしていてものすごい緊張感だった…
1人の人物の"手"にフォーカスした回想は美しくて抒情的、人は生きるうちに手に魂が宿るんじゃないかと思うほどだった。赤子の時にはおもちゃを、鼻水を、かたつむりの目をさわった手。ピアノを弾き、地球儀を回し、なんでもできると思っていた少年の頃の手。美しい音楽とともに思い出される記憶の数々にすでに泣きそうになりながら、"手の持ち主"の物語がどんどん明かされていく。

記憶を辿る物語は手の持ち主ナウフェルの部屋で現在にたどり着く。切断された手首のそばに寄ってみても元に戻るわけじゃなかった。ガブリエルにメッセージを伝えるかのように角砂糖でイグルーを作るナウフェルの手。
屋上ではそのままのイグルーと、木の板と録音されたテープがあった。
ずっと見つめていただけだったクレーンまで飛んでたどり着き、ナウフェルの心が前を向いたことを感じさせた。おぼろげな意識のなかで追っていたハエは、手が切断されるその直前にしっかりと捕まえていた。
万里

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