ぐち

失くした体のぐちのレビュー・感想・評価

失くした体(2019年製作の映画)
3.5
最初は完全なストーカーでインセル(自分が恋愛弱者なのは相手や社会に問題があるとする女性嫌悪とも地続きになる思想)映画かと思ったけど、ラストああいう風に着地するとは思わなかった!
不思議な爽快感のあるラストとても好き。テープレコーダーの使い方も上手かった。

現代社会をリアルに切り取ったキャラクターや、やや暗めでエンタメ性に薄いストーリーを「手」というアイテムと視点で描く発想がすごい。「手」の冒険は完全にクライムアクションばりのエンターテイメントになってる。
主人公自身があれを演じたら違うジャンルの映画になってしまうところを、そこを「手」に置き換えることでヒューマンドラマとして成立させてる。
分離した「手」というキャラクターだけでなく、ヒトの一部としての「手」が紡ぐ物語にもなってるのが良かった。

少し気になったのは、「手」の視点が度々出てくること。観客をハラハラさせ画面にスペクタクル感を持たせるためには効果的なんだけど、どうしても「手」の「視点」とは…?って気になってしまって…眼球も脳も無いのに…みたいな…

いや、そこを突っ込んだらそもそも手が動く設定に無理があるやんファンタジーなんだしそこは突っ込んじゃダメなところだっていうのもわかってる!わかってるんだけど、なまじ動いてるのがヒトの感覚器官なだけに、その器官とはちがう感覚が強調されるとチグハグしていると感じてしまった。
一人称視点を入れずに第三者視点で描き続けるとか、理想は視覚に頼らない、「手」なりの触覚を生かした描写をしてくれてたら、もっと見た事のない新しいアニメーションになったのかなと思う。
ぐち

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