TAK44マグナム

仮面病棟のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

仮面病棟(2020年製作の映画)
3.6
見えない仮面。


実際に医師でもある知念実希人による同タイトルの原作小説を映画化。
脚本執筆に原作者も参加しているので、ミステリーとして破綻のない作品に仕上がっていますね。

監督は「屍人荘の殺人」の木村ひさし。
多彩なテンションで物語を紡げる監督さんですが、本作は閉鎖された深夜の病院という冷たい空気感が映像を支配、少し重ためのテンションで最後まで引っ張ります。

キャストは主人公の当直医役に坂口健太郎。事件に巻き込まれる女子大生役は永野芽郁。
他、高嶋政伸、内田理央、大谷亮平などが共演。


認知症の老人などを療養させている病院を舞台にしたクローズドサークルもの。
ピエロマスクを被った凶悪なコンビニ強盗が病院を占拠、たまたまアルバイトで一夜限りの当直医をしていた医師が強盗に撃たれた女子大生と一緒に脱出を目論む。
しかし、その過程で段々と病院に隠された「重大な秘密」が明らかになってゆく・・・


基本的には悪くない出来だと思います。
こういったミステリー系の映画の中では非常に真面目に作られていて、やはり原作者が脚本を手掛けているのがうまく作用しているのでしょう。
でも、小説ではうまい具合にミスリードさせられたであろう部分も、いざ映像にすると分かり易くなりすぎてしまうのか、かなり早い段階で事件や黒幕について予想がついてしまいました(何だったら観る前から黒幕が誰かは予想でき、その通りでした)。
なので、「たぶんこういう事で、黒幕はこの人なんだろうな」と、こちらの想像を超えてはくれず、ミステリ好きには少々物足りない。
あまり複雑な話ではないので、張られた伏線も含めて理解し易いのは一般的な商業映画としては正解なのでしょうけれど、ちょい緩いような気がしました。

終盤の展開は思ったより骨太で、坂口健太郎と永野芽郁の演技に思いがけずビリビリときましたよ。
甘すぎず辛すぎずなラストも支持したい。
ちゃんと悪が断罪されるので後味は良いですね。

(原作が、ですが)巧いなと思ったのは、ピエロマスクを用いることで「仮面病棟」というタイトルにきちんと意味を含ませているところ。
本作における「仮面」とはピエロのマスクのことだけでなく、秘密を持つ者がそれを隠すために被る「見えない仮面」のことを指します。
ピエロのマスクは、たんなるペルソナでしかない。
それでは、いったい誰が「見えない仮面」を被っているのか?
舞台となる病院でさえ真の顔を隠しているわけで、本作は様々な仮面が跋扈する物語なのでした。


あるメッセージがこめられた社会派な一面を持つミステリーですけれど、肩肘張らずに楽しめるエンタメ作品。
思ったよりもこじんまりとしていますが、気楽に推理を楽しめる作品としてオススメです。
はたまた、内田理央のナースコスプレ目当てでも可(苦笑)
新型コロナウィルスの影響で新作映画の公開が軒並み延期になってしまっているなか、例えば普段は洋画派の方などもチョイスしてみる価値はあると思います。


劇場(TOHOシネマズ海老名)にて