「自分は誰?」というサスペンスパートは面白いのだが、とってつけたようなSF設定が陳腐でじつに惜しい作品。
監督に言わせれば、主題は自分探しだということなのだろうが、そこに持って行くための考察があまりに雑。
というか「天才になる」をメインに持ってくる勇気が無かったのだろう。
これ系の超名作が多々あるので、よほど練らないとパクリで終わってしまうのは目に見えている。結局「あ、逃げたな・・・」って感想になってしまうのは残念。
だったら天才になるという設定はなくして、超善人になるとかにした方が納得いった。その方が自分の正体を知ってからの葛藤が深くなると思うのだが。
「天才」の一言で済ませたのが敗因。
言語、数学、音楽、絵画など行儀よく種類分けしたのもいまいち。
せっかくウサギのシークエンスを出したのなら「アルジャーノン」系の衰退していくパートをつければ感動できたし、全員同じ「超人類」的な天才として、その攻防をメインにしてテッド・チャンの「理解」のようなストーリーもアリだったのに。
もう少し踏み込んで設定を作れば、良いSFになったのに、惜しい作品だろう。
余談。
「天才になる」だったら、せめて「脳のある部分が肥大して、その部分によって異なる才能を示す」ぐらいにしておけばリアリティがあったのに。
それによるアスペルガー症候群で各分野の天才になるとか。
でも、どっちにしても「性格の矯正」より「天才制作」の方が絶対に儲けられそうなので、今作の悪役企業の行動はあり得ないだろうな。笑