永遠の寂しんぼ

光を追いかけての永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

光を追いかけて(2021年製作の映画)
4.5
『少年少女のサンクチュアリ』

僕も中学・高校の時、退屈な授業中ずっと思ってたよ。学校にミサイルでも突っ込んで学校ぶっ壊れて休校にならねぇかなーってw

秋田の田舎町に越してきた中学生の少年と町で出会った少年少女たちの傷つきやすい思春期の葛藤を描いたヒューマンドラマ系の映画。地元秋田の映画館の他には全国でも数箇所でしか(たぶん)公開されなかったかなりの小規模公開映画だが、事前情報からかなり気になっていたためにちょっと無理をして観たが、これも本当に観れて良かったと思えた傑作だった。

まず第一に青春モノとして、世界の終わりを望む(笑)根暗で大人しい中学生の主人公彰と町の畑の中で出会った他者を拒絶する不登校の女子中学生・真希が惹かれあっていく様が個人的な好みもあって結構ササるものがあった。2人を演じた中川翼と長澤樹の演技力はお世辞抜きで素晴らしく、もしかしたら数年後には若手俳優のホープとして台頭してくるかもしれない。

他の中学生役の役者陣の演技も良く、彼が通っている閉校が決まってしまった中学校での出来事もなかなか面白い。個人的に中学生というのは心も体も中途半端に成長してしまって不安定な、人生の中で1番どうしようもない時期だと思う。それに行きたくなくても行かなきゃいけない学校で見たくもない他人を嫌でも意識しなくちゃいけないイライラやもどかしさが伴う鬱屈した時期でもあると思う。(少なくとも僕はそうだったw) そんな彼らが衝突したり葛藤したりしつつも、なんたかみんなで居心地の良い場所を作れないかもがいていく様はなかなか共感できて観て良かった思えた。中学校での出来事が、彰と真希が出会った田んぼの中のミステリーサークル、2人だけの聖域とも重なっていくのも物語として巧い。

この年の邦画の中ではベスト級に気に入った傑作なのだが、一応不満点も書いておくと、いくつかひっかかるシーンもあった。例えば柳葉敏郎演じる真希のおじがニワトリを締めるシーンとか『要るか?』とも思ったし、逆に生駒里奈らが演じていた中学校教師とか町の役場の人とかの会話で仄めかされていた、田舎特有の問題なんかは結局どうなったんだっけ?あとこの映画は映像は綺麗だし音楽も心地良いし全体的に高品質なのだが、クライマックスのシーンの音楽はやり過ぎかな?いきなりバカデカい音の曲が流れてビックリしてしまった。

とは言えトータルでは大満足。監督の成田洋一さんはベテランCMディレクターらしいけど、初監督でこのクオリティは凄い!これからも小規模公開のマイナーな邦画でこういう良いヤツに沢山出逢えると嬉しいんだけどなー。