空海花

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男の空海花のレビュー・感想・評価

4.1
マーク・ラファロ製作・主演の実話の社会派ドラマ。
監督はトッド・ヘインズ。
1998年、企業弁護士のロブは、大手化学メーカーの廃棄物によって、190頭もの牛が病死させられたという調査依頼を受ける。
死んだ牛を解剖し、異常がある部位や病変などショックな映像も少しあるが
埋められた墓場の広さに心がひんやりと凍っていった。

やがてロブは調べるにつれて深刻な事態に気づき、
約7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏み切る。
相手は「テフロン」で莫大な利益を得た、アメリカ合衆国を代表する大企業のデュポン社。
強大な権力と資金力を有する巨大企業との法廷闘争によって、
ロブ・ビロッドは部下や上司からの支持も失い、脅迫も受けて身の危険も迫ってくるが─

公害問題を題材にした作品は、『MINAMATA』が記憶に新しいが、どちらもまた解決はしていない。
激しいストレスにも晒される中
巨悪に立ち向かう弁護士の姿には素直に感動と尊敬の念が生まれた。
大企業が40年もの間、汚染物質の有害性を知りつつ垂れ流していたということの凄惨さと隠蔽には、想像以上に嫌悪と反発を抱いた。
これは映画でぜひ確かめてみてほしい。
それと同時にこんな弁護士がいるんだという希望もまた、この作品のメッセージである。

法廷も舞台になるので法廷劇とも取られそうだが、
裁判に勝てばいいというものではなく
科学的調査に何年もかかったり、
地道な調査活動など
そちらの方が印象深い。

また家族の支えもあったことを丁寧に描かれているのが良い。
妻役はアン・ハサウェイで元は弁護士だっただけあり、最初は喧嘩しつつも夫を信じて支えていく。
そして弁護士事務所もまた夫にとっては家族同然であったと語るシーンがとても良かった。
上司(ティム・ロビンス)との関係や人柄もこのドラマの信頼性を高め、良いものにしている。
正義とは何か、という答えが映画の中に提示されている。
そしてこういった社会的映画を製作したマーク・ラファロが演じる弁護士とダブって見えてしまう。

『MINAMATA』と同じように被害に遭った人達もわずかながら出演する。
そこにも多大な勇気を感じた。


2021レビュー#219
2021鑑賞No.452/劇場鑑賞#94
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