ウシュアイア

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男のウシュアイアのレビュー・感想・評価

3.8
巨大化学メーカーを相手に公害訴訟を手掛ける弁護士が主人公の実話ベースの法廷サスペンス。

日常生活でおなじみのテフロン加工のフライパンなどに用いられる化学薬品の製造過程で生じた廃棄物により深刻な土壌・水質汚染が発生していたのが1990年代ということで、少しびっくり。先進国でもローカルな公害問題は完全に過去のものというわけでもなさそうだ。

話の雰囲気はシェールオイル採掘に伴う土壌汚染と石油会社の搾取を取り上げた『プロミスト・ランド』に似ている。自分が生まれ育ったわけでなくても「田舎」をもっていると、ある程度歳を重ねると「田舎」を大事にしたくなる。主人公のこの無謀な訴訟の決意の背景に、自身の幼少期の体験が影響している。『プロミスト・ランド』と違うが、やっぱりおばあちゃんとの思い出には弱い。そして、劇中で流れる「カントリーロード」は胸に迫るものがある。

主人公のローファームのボス弁もいい人で良かった。ティム・ロビンスの熱弁にはしびれた。


少しに気になるのは、廃棄物による土壌・水質汚染の問題とは別の問題であるテフロン加工の製品の使用が使用者の健康被害につながる可能性の話が整理されていないところだ。製造過程で有害物質が出たからと言って、その製品が人体に悪影響を与えるという考えは間違いだ。製造過程で有害物質が出る製品はテフロンだけではないし、テフロンは使用による健康被害から使用が規制されているわけではない。そして、マグロなどの体内に蓄積された重金属のように、摂取上限を示して健康被害が起こらない範囲で有害物質の取り込みをやむなしとする考え方もある。丁寧に説明できないのであれば、安易にテフロンの使用が健康被害につながるといった示唆を入れない方がいい気がした。むしろ、例えば放射性廃棄物のように有害物質が適切に管理しきれず、SDGsの観点から使うのはやめようという主張の方が理に適う気がした。

関連
『プロミスト・ランド』
https://filmarks.com/movies/56985/reviews/120769165
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