shikibu

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男のshikibuのレビュー・感想・評価

4.0
めちゃくちゃ良かったぁ。泣いた。年間ベスト級。トッドヘインズの映画、丁寧だなぁ。社会派でもあるし、仕事映画でもあった。大量の書類の中で一枚一枚、見ていくシーンがグッとくる。最初の一枚目が50年前のなんてことないクリスマスカードなのも良い。

企業側に明確な悪役がいない(強いて言うなら顧問弁護士役だが、意図的に目立たせてない気がした)のが、逆に実態が掴めなくて怖かった。
一方で、被害者が受付に来るのをほとんど壁しか映らない横からのショットで撮ってたり、大量に埋葬された牛の墓や部屋いっぱいになるほどの大量の資料(それが後半には全て整理されてる様子)など、細かい描写の積み重ねがいかなるセリフよりも雄弁にこの企業の狡猾さ、悪行を語ってた。

並走しながら笑う少女の歯が黒いのに回想でわかるカットも、観客である自分も知らず知らず見過ごしてたことに気づかせれてゾッとした。公衆電話→携帯電話、子供が赤ん坊→学生へと時が流れていくのをしれっと見せる描写もグッとくる。
アンハサウェイが夫を泥棒と勘違いするシーンもどっちか分からなくてドキドキした。
部長が開示請求出す時に幸運を祈るって言うのとか(顔も見せないカット割も最高)、集団訴訟を決める時のセリフとか、一方でお金の面ではシビアだったりするところとかの現実と理想の塩梅が絶妙だった。
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