一人旅

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男の一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
トッド・ヘインズ監督作。

米ウェストバージニア州で大手化学企業:デュポン社が人体に有害な化学物質を40年間にわたって土壌や水中に垂れ流しにし、近辺の住民に深刻な健康上の被害をもたらした環境汚染問題の実話を、『キャロル』(15)、『ワンダーストラック』(17)のトッド・ヘインズが映画化した実録社会派ドラマの傑作で、マーク・ラファロが正義と信念の弁護士を熱演しています。

本作は、世界有数の化学メーカーである米デュポン社がテフロンの製造過程で使用されるPFOA(有機フッ素化合物)という有害な化学物質をウェストバージニア州の自社工場近辺に投棄し続け、かつその事実を40年間にわたり隠蔽し続けた結果、同州やその近隣州の3千人を超える住民に重大な健康被害をもたらした大規模環境汚染の真実を、7万人の住民を原告団としてデュポン社を相手に集団訴訟を起こしたオハイオ州の実在の弁護士:ロブ・ビロットの姿を通じて描き出した“法廷+伝記ドラマ”の傑作で、自社の利益のために不都合な真実を隠蔽し続けた同社の悪質な企業体質に、揺るぎない正義と信念で果敢に斬り込んでいった環境派弁護士の10年以上に及ぶ法廷闘争のゆくえを事実に基づき詳らかに再現しています。

対タバコ企業『インサイダー』(99)や対エネルギー企業『エリン・ブロコビッチ』(00)等に連なる大企業相手の実録訴訟ドラマであり、デュポン社の機密文書開示請求、有害物質の種類の特定、人・動物に対する健康被害の証拠確保…と地道な手続き&調査の積み重ね、そしてあの手この手で調査妨害を図るデュポン社との水面下の攻防を経て、米化学産業界を代表する巨大企業の許されざる罪を公に糾弾していく社会派映画で、ノンフィクション物ならではの卓抜した説得性に心揺さぶられますし、長引く闘争の中で次第に憔悴していく弁護士を熱演したマーク・ラファロ、彼を支える妻:アン・ハサウェイ、弁護士事務所の代表:ティム・ロビンスら実力派同士の演技合戦も真に迫っています。
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