アントニオーニはアンナの失踪という謎を中途で完全に放棄したわけではないように思います。
たしかに中盤以降はサンドロとクラウディアの情事の旅がメインであり、だからこそ邦題も「情事」なのだと思われますが、2人の関係性には常にアンナの不在という影が潜んでいます。終盤でサンドロが別の女と一緒にいるところを偶然クラウディアに見られてしまうことでその影が顕在化し、2人の関係性が所詮は孤独から逃れるための空虚な繋がりに過ぎないことが判明します。そして、不在であるはずのアンナという存在を痛感して涙を流してしまう。
アントニオーニは作中に明確な説明文を用意しません。それゆえ難解に感じる部分も多いわけですが、代わりに島や海、建物などの風景が雄弁に心情を吐露します。また、シチリアの美しいショットが多数含まれていました。