ぐれーす

シネマ歌舞伎 女殺油地獄のぐれーすのレビュー・感想・評価

シネマ歌舞伎 女殺油地獄(2018年製作の映画)
4.5
現幸四郎と猿之助による「女殺油地獄」を東劇にて鑑賞。
歌舞伎には放蕩息子が実ハ良い息子であったという話があるが(「義経千本桜のすし屋」など)、幸四郎演じる与兵衛はそんなことはない。骨の髄までろくでなしで、親への不孝、身内への暴力、金の無心など枚挙にいとまがない。
そんな彼が勘当され、行くあてもない中転がり込んだ油屋で、彼は猿之助演じる女夫人を、油まみれになりながら殺してしまうという話。なんとも美しい物語であった。

このシネマ歌舞伎のために、三幕の殺しの場面は観客のいない中での撮影をしたとのことだが、劇場では聞くことが叶わないような音が拾い上げられていたのが圧巻だった。
油が溢れる音、刀を振るう音、帯が解ける音、血を顔に塗る音、息遣い----そこに刀があったから、そこに彼女がいたから、彼があの両親のもとで育った彼だから、偶然の重なりから生まれた殺人。ああなんと奇妙で心が寒さで震える物語、演技、映像なのだろう!幸四郎の名演技素晴らしかった!!
Jokerが話題になっていたが、好きな人はきっとこの近松門左衛門の話も大いに気にいることだろう。
無限に見返せるPVがこちら→https://youtu.be/9WP1hOZjwTU

以下蛇足
そのほか心が震えた瞬間を備忘録に。
・元使用人で継父となったが故に、放蕩息子を叱りきれない父。後ろ姿が先代に似ていて彼を思い出すと吐露する場面、好きだった
・猿之助の両親に向ける顔、緊迫した空気の中で逃げる姿、セリフがない分その緊張を間をどう持たせるのか、全く心配してませんでしたが、幸四郎と合わせてあっぱれでした
・歌昇くん演じるお殿様、かっこよすぎてうっとり
・油ではなくフノリというものを使用しているらしい。とろとろ。
・幸四郎の演技力に舌を巻く。どうしようもない、けれどはっとする色男を前半で演じ、後半の特に殺しの場面では狂気を秘めた嬉々とした姿、我を取り戻した後のどうしようもなさ、本当に素晴らしかった。今年の8月の弥次喜多@歌舞伎座で、猿之助と二人、「女殺未遂とろろ地獄」をやっていた時と本当に同一人物?という感じ笑