こしあん

ミセス・ノイズィのこしあんのレビュー・感想・評価

ミセス・ノイズィ(2019年製作の映画)
4.3
すごくよくできてたなぁ。評判通り、面白かったです。
脳内で中島みゆき大先生の「Nobody Is Right」がずっと流れていました。

 ♫もしも私が全て正しくて
  とても正しくて 周りを見れば
  世にある限り全てのものは
  私以外は間違いばかり

主人公の小説家の女性も、布団叩きの騒音おばさんも、絶妙にイライラさせられるタイプの人。
「チャースカ!」(出典:DUNE 砂の惑星)して、ぶっ倒したくなる😆

視野が狭く、自分、自分、自分ばかりで、相手の状況や気持ちを想像できない。人の話をちゃんと聞かず、最初の印象で一方的に決めつける。

良くも悪くもどっちもどっちな二人。

自分だけが全部正しくて、相手が全部間違っていて非常識。そこを曲げられず、相手がなぜそういう行動を取るのか、という理由を少しも考えようとせず、独りよがりな正しさの枠にはめる。

はじめの一歩を掛け違えてしまったために、どんどんズレて、どんどんイライラが降り積もっていく。
物事を深く考えないタイプの二人なので、簡単にレベルの低いバトルが勃発し、ただの隣人トラブルが、社会を巻き込む大騒動に発展していく。
俯瞰で見てる分には面白いですけどね🤣
そりゃ、ネットでバズりますよね。

そこから後半、見えなかった事情が見えてくる展開がうまい!

同じものを見ていても、人によって受け止め方が違う。
たとえば一枚の写真を見せられて、人物の顔しか見ない人もいれば、服装を見て「これはあのブランドだな。なかなかオシャレだな」と思う人もいる。背景に映るものを見て「これはハワイかな? グアムかな?」と想像を膨らます人もいる。左の隅っこに映る心霊らしきものを見つけちゃう人もいる。さらには、この写真を見せた本当の意図は何? と勘繰る人もいる。

スパイ活動においては、その人のレベルに合った情報しかキャッチできない。みたいな話を思い出しました。

何が見えて、何が見えないかは、経験と視野、感度の違い。
「自分だけが正義」というフィルターがかかっているから、見えてるシーンの解像度が低いんでしょうね。 

トリミング次第で見えるものも変わる。

終盤はなかなかグッとくるものがありました。ツラくて笑えなくなってくるし、ありがちな手のひら返しもゾッとする。

あと、役者さんも有名どころがあまりいないので、実在事件の再現ドキュメンタリーぽかったです。

主人公二人をはじめ、動画UPしちゃう甥っ子(いとこ?)や、無責任に追い詰めてくるマスゴミはもちろん、ダンナも子どもも含めて登場人物ほぼ全員、絶妙にイラッとします😅
みんなまとめて「チャースカ!」したい。
キャバ嬢が何気に一番、まともで的確だったかも😆

そんなふうにイラッとするからこそ、鑑賞後のカタルシスがハンパない‼️
いろんな感情を揺さぶられる。
現代日本を生きる人々にはリアルに刺さる傑作だと思います。

私もご近所の騒音とかにイラッとすることはよくありますが、心の中で一旦「チャースカ!」して、落ち着かせようと思います😂
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