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アトランティスのolnのレビュー・感想・評価

アトランティス(2019年製作の映画)
3.5
戦争が終わって1年経った
曇天の空は頭の中に住み着いて離れない

銃撃の音
舗装されていない道路
給水車
帰ってこない待ち人
置き去りにした無念

この身は熱を失ってしまった
デニムパンツも凍るこんな日を鎔鉱炉で溶かして
夢の続きの現実で身を寄せた

ここが生きる場所だから




感想です。

2019年の作品ですが、2024年に戦争が終わりましたという設定で、何をか言わんやお察しくださいませという内容でした。つくづく今年始まったことではないのだなと思い知らされます。

鑑賞していると、この監督の独特な撮り方に気づくのですが、基本的に固定カメラで客観視点の1シーン1カットで情景を描きます。おそらくこうした撮影方法を取ることで、何の意思表明もしていません。これを否定も肯定もしていませんというスタンスで、検閲に引っかからないようにしているのだろうなと、昨今の某国の挙動を見て邪推してしまいます。

この視点の別の効果として、フィクションであるにもかかわらず、ただの日常を切り取ったかのような現実味を帯びさせてくれました。そんなことするわけないだろと思えるようなホイールローダー風呂も、水事情が厳しい世界における贅沢として情感が沸き立つシーンに仕上がっていました。なんて特別なことは起きない作品なのに気づけば引き込まれていて、パンツ履いたまま入ったら、帰り凍えるよ?と心配になりました。
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